無意識を巡って・・・
人々の可能性や創造的能力の源が<無意識>です。
先進的な心理臨床は、今はっきりと<無意識>領域をその足場の一つに据えています。つまり、私たち人間の心は気づいている部分だけではなく、実は気づいていない大きな領域を持っていること、そしてそこにある心的作用は、かねてフロイトが<無意識>をどこか否定的なものとしていた理解をこえて、人々の可能性や創造的能力の広がりを備えた内的世界として、援助的な心理学と心理臨床の中で新たな注目をあびる段階を迎えています。
今までともすれば意識至上主義に終始していた近代以降の文明社会の行き詰まりを脱して、私達の内なる<無意識>の可能性と、この<無意識>と<意識>の力をどう統合して、新たな心的世界を人々が共有していくことができるか、というテーマがここにあります。
私たち、日本人は、昔から<無意識>を活かすコツを知っていました。
<無意識>はフロイトにおいて発見されたと欧米ではいわれています。ちょうどアメリカ大陸が西洋人によって<発見>されたように。
しかしもとより、無意識は発見される前から、アメリカ大陸のようにどっしりと存在してきました。
無意識は<発見>されたことで、不自然に歪曲されたところがあります。そこには意識を骨の髄までよりどころにしてきた西洋の視点の限界にもつながる、実はここでも意識にかたよった受け取り方がみられます。
<無意識>は原因的な理解にとどまらぬ、ある確かな創造的本質をもっています。
私たち日本人や東洋人のもつ体験、感性は、<無意識>の新たな深さと確かさを備えた理解と復権をもたらすことを、私たちはかねてから書籍や講座などで発信してきました。
今、時代を切り開くキーワード、それは<無意識>です。
時代の激しい転換期にある今日の我が国で、心の問題は個人、家族、社会のさまざまな矛盾や葛藤をそのまま大きく映し出す鏡ともなっています。そこでは表面にあらわれているさまざまな問題や病理に目を奪われがちですが、そこにとどまるだけでは事態は解決できるものではありません。こういう時代こそ、逆に、人間のもつ無意識のうちの可能性や確かな力を信じ、活性化していくことによって、この社会の閉塞状況を打開していくことが私たちに求められています。
今、時代を切り開くキーワード、それは<無意識>です。
たとえば、社会活動におけるさまざまなデザインや企画などに携わる、例えば、クリエーター、プランナーの方々においても、<無意識>のもつこうした創造的な本質をどう活かすか、そのことによって人間の全体性をどう取り戻すか、それは今の時代、不可欠のこととなってきているといえるのではないでしょうか。
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