「現代催眠入門〜深層アプローチの技術」(1993年版)より
禁無断転載のこと

■ 無意識はあなたの味方です
代臨床催眠の一つの特徴は、現代臨床催眠が「無意識」について、どう考えるかということです。ところで、<催眠>というと、この無意識という言葉がよく浮かび上がってきます。確かに古い催眠術においても催眠療法および心理療法全般においても、「無意識」という言葉はキーワードになっていました。ただ、無意識というものをどのように考えるか、無意識の働きをどのように理解するか、ということについてみると、実は、伝統的な催眠法や心理療法と現代臨床催眠においては、その無意識のとらえ方そのものにおいて、たいへん大きな違いがあります。端的に言うと、伝統的な催眠法レベルで考えるとき、無意識はどこか否定的な働きをその人にもたらすものとして考えられています。その人のつまずきの石として、考えられていたところがあります。つまり、ある人がいい状態になることを望んでいるのにそういう状態になることができないのは、その人の、そのような良き意志(意識)の心を妨げるものとして、無意識の働きがあるからだ、といったとらえ方があったためです。そして、無意識をそのようにとらえる限り、伝統的な催眠法を用いてその人を変えようとするとき、当然ながら、そういう無意識の働きを取り除こうとしたり、修正しようとしたりすることが、もっぱら大きな目標になったのです。そして、これは標準的な心理療法においても基本的な姿勢であり、コントロールモデルとして考えられてきたものです。

代臨床催眠においては無意識のとらえ方、とりわけ、無意識の働きというものを考えてみると、そのような伝統的な催眠法レベルのとらえ方とは非常に異なっています。いや、むしろほとんど逆だ、と言ってもいいくらいです。つまり、現代臨床催眠においては、無意識はけっしてその人のつまずきになるようなものではなく、本来、その人の力になるもの、役に立つもの、可能性であり、財産であり、その人を守ってくれているもの、少なくとも、役に立とうとしているもの、守ろうとしているもの、という前提がそこに貫かれています。そして、この前提の違いは、当然ながら、誰かに関わっていくとき、とても大きな違いとなって現れてきます。現代臨床催眠においては、その人の無意識の働きを敵視したり、取り除こうとしたりすることにエネルギーを使いません。むしろ逆に、その人の無意識に近づき、その人の無意識の味方をし、そうすることによって、その人の無意識が、今度はその人のさらに大きな力強い味方になって働いてくれるようにサポートしていく方向で、関わっていくのです。無意識の働きを「取り除く」のではなく、一貫して、無意識の、その良き意図をさらに力強く支援しながら、援助を進めていくのです。
、こうして無意識について、現代臨床催眠の考え方を聞いてもらうとき、皆さんは改めて、今まで言い習わされてきた無意識というものが、どこか何かやや暗いものとして扱われてきたことにお気づきになるかもしれません。そして、これからは、無意識をそのようなものとしてとらえるのではなく、私達一人ひとりが現実の生活を送るうえで、もっと役に立つもの、力になってくれるもの、という明るいイメージの中でとらえ直すことができることに気づいてもらえたかもしれません。一言でいって、無意識というのは、溢れるばかりの知恵の宝庫なのです。そして、ここで私達が、実際に学びたいこと、ぜひ手に入れたいことは、その知恵の宝庫である無意識にどのように接近し、そしてその無意識の味方になり、そして次に、その無意識にも強力な味方になってもらい続ける、その具体的な方法です。

の方法を学ぶ時、皆さんは、やがて自分の無意識とも、いままで以上に仲良くなっていくことでしょう。そしてそのとき、あなた自身が、あなたの知恵の宝庫である無意識に助けられ、たくさんの成果を収めることができるでしょう。実際、無意識とうまくつきあえることによって、あなたはあなた自身の限界を突破し、あなた自身の力を一層発揮することができるでしょう。そして、そうすることによって、あなたはまた、人に対しても、その人の無意識に確かな接近を図ることができ、そして相手の無意識と共同作戦を取りながら、相手のより望ましい変化にあなた自身が大いなる力を発揮することができるようになるでしょう。<現代臨床催眠>の醍醐味というものはここにあるんだな、とあなたは改めて思うはずです。
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