サブプライム問題等の影響で、不動産や株式の価格が下落しているが、ゴルフ場の売買にもその影響が波及し、売却価格の急落や売買交渉の不成立が増加している。
ゴルフ場のM&Aに携わってきた関係者から「10数億円で買わないか」と持ちかけられ物件が、1カ月強の間に半額以下の「数億円でどうか」という具合に、極端なダンピング状態になっているケースもある。
また、本紙既報通り、今年7月に売買が成立した加茂GC(18H、千葉県)の株式の売買金額は推定15億円だが、売出し時は20億円といわれていた。
さらに、法的整理に入ったゴルフ場企業や任意での売却を希望する企業が、ビット(入札)を行っても目標額に遠く及はずビットが成立しないという報告もある。ゴルフ場の競売も不成立に終わるケースも出ている。
このように売り手市場から買い手市場になったのは、不動産会社に対する資金流入の停滞。金融機関や投資家等からの資金で、事業を拡大してきた新興の不動産会社(以下=新興不動産)を中心に業績が悪化し、法的整理に入った会社も増えている。
これに加え、ゴルフ場を投資対象としてファンドを組成したグループやゴルフ場に投資してきた個人・企業(以下=ファンド・投資型)を中心に、今後もゴルフ場の売り物件は増加する様相だ。
そこで、本紙が毎年発表している経営交代ゴルフ場リストの中から、ファンド・投資型が取得したゴルフ場と新興不動産を含む不動産会社(大手・中小不動産会社を含む)が取得したゴルフ場を調べたところ、
平成15年から今年6月までの5年半で経営交代が判明した延べ787コースの内で、ファンド・投資型(一部新興不動産を含む)が取得したゴルフ場数は延べ89コース、不動産会社が取得したゴルフ場は延べ86コースとなり、両者計では延べ170コースを超えた。
ファンド・投資型の延べ89コースは売却予備軍とみることができ、すでに転売されたケースさえある。
象徴的なのはハウステンポスCCジャック・ニクラウスC(18H、長崎県)で、野村證券が組成した投資事業組合が民事再生手続きを経て平成16年に同ゴルフ場を取得したが、19年にはアコーディア・ゴルフに売却している。
一方、不動産会社関連では、数年前にゴルフ場経営に進出してきた新興不動産を中心に、所有ゴルフ場の売却が進みはじめている。
すでに、平成15年にゴルフ業界に進出した(株)ゼクスが、昨年から今年にかけて系列6コース全てを売却した。
17年進出のパシフィックホールディングス(株)も12コース中4コースを売却し、残りコースも売却のために特別売却プロジェクトチームを結成しているほどだ。
また新興不動産の保有するゴルフ場を集計したところピーク時には、12社で56コースを保有。現時点でも11社で45コースとなっている。
これらゴルフ場のかなり数が、ファンド・投資型のゴルフ場と同様に売却予備軍。いわゆる”2次売買”の可能性のあるゴルフ場はファンド・投資型を含めて100コースを上回ることになる。
買い手側のファンドや新興不動産が売り手側にまわったことから、買い手側が少なくなっているわけだ。需給バランスが崩れてきており、買い手側は売買価格が一層下落するのを見込んで、模様眺め様相となった。
このため、売買価格も下落し続けると同時に、ここしぼらくは売買の成立件数が少なくなるとみられる。
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