銀行から違法な勧誘を受けて、ゴルフ会員権を購入したため損害を被ったとして、損害の一部である3500万円の賠償を銀行に求めたものの、東京地裁民事部8部(鹿子木康裁判長)が、”違法ではない”とした判決を1月19日に下したのを不服として、控訴していた会員が控訴理由書を4月10日に東京高裁に提出していた。
会員は、一審の判決に対し「”バックがフジパンであるという説明をしても虚偽には当たらない”等、きわめて無理のある判断をして請求を棄却」、「バックの意味について言及していない」などとして控訴したもの。
訴えているのは富士C大多喜GC(18H、千葉県、現・大多喜城GC=法的整理が終結し現在は東急不動産グループに)の会員(代理人=道本幸伸弁護士)で、訴えられたのは同GCの会員権の購入を勧誘した東京スター銀行(当時は東京相和銀行=以下、銀行)。
一審の東京地裁の判決によると、会員が代表取締役を務める会社が同銀行の営業課長の勧誘(ゴルフ場会社関係者の説明や勧誘は一切なかった)で、平成2年3月に同銀行の提携ローンを利用して3809万円(内預託金3500万円)の法人会員権を購入(その後の6年5月に、代表個人に名義変更)。
しかし、同ゴルフ場は平成16年12月に民事再生法を申請し、事実上倒産したため、会員権の実質価格は預託金の5%(175万円)となり、会社と現会員(会社の損害賠償請求権は会社から会員が譲渡を受ける)は損害を被ったとしている。
この損害は違法な銀行の勧誘が原因だとして、銀行を訴えたもの。
銀行の具体的な不法行為について、
@ 会員は銀行の営業課長が”ゴルフ場はフジパンが経営している”、”名古屋の優良企業である
フジパンがバックアップ”等を説明しており預託金の償還についてフジパンが責任・保障するか
のような虚偽の説明を行った、
A ”将来の値上がりも期待できる”と断定的に説明した、
B 執拗に勧誘、断れば融資に不都合が生じるとのプレッシャー、恫喝を与えたので、金融機関の
優越的地位を濫用した、
C 会員権の販売媒介行為は銀行法違反、
・・・・などと主張した。
裁判所は、会員の主張通りであれば「銀行は、虚偽の説明をしたときに損害賠償の義務を負う」と判断。
しかし、
@ については、「”フジパンがバックにある”では虚偽とまではいえない」、「パンフレットにも記載は
ない」、
A については、「(営業課長の)主観的な評価、一般的な予測」、
B については、「融資の早期返済等の不利益を与える態度は示していない」、
C については、「提携ローンの利用を勧誘したので、銀行の業務そのもの。銀行法に違反してい
ない」
・・・・などとして会員の主張を退けた。
なお、平成16年8月9日の東京高裁第5民事部判決(関係記事)では、銀行の会員権の勧誘販売が争点になり、高裁は「銀行の担当者としてなすべき義務を放棄した、いわば不作為の欺罔行為に匹敵する過失があった」とし、銀行にも責任があるとした判断を下している。
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