Mount_06遠い山~至福の時
槍ヶ岳
初めての北アルプスに、そして槍ヶ岳との出会いに前夜、沢渡・駐車場のテントから興奮していた。
翌朝快晴の中、紅葉の山々に囲まれて上高地~明神~徳沢~横尾までピッチが上がった。
そして槍沢を過ぎて氷河期名残のカールにかかる頃に私はバテてしまった。
さらに追い討ちを掛けるように昨夜の新雪により足元がおぼつかなくなる中、そこからの道が長かったことを思い出す。
予定では稜線に出て、槍ヶ岳山荘横にテントを張ることになっていた。
しかしバテた私のためにその夜は殺生ヒュッテどまりとなった。
そして深い疲労の中、遠い山を思いながらヒュッテ横のテントで眠る。
そして夜が明けると…。
朝焼けの中、富士山を遠望し穂高連峰を目の前に眺め、振り返れば新雪をまとった槍ヶ岳の穂先が天を突いていた。
それは友と共有する"至福の時"の始まりだった。
今まで経験したことのない時間を知った。
以降この時を求めて山行を重ねることになってしまった。
しかしこの山行でお世話になり、以後何度もお供させて頂いた石井初男君は3年前に山から帰らぬ人となった。
初男君との数々の山行を思い、心からご冥福をお祈りします。