平成22年(受)第622号 詐害行為取消請求事件
平成24年10月12日 第二小法廷判決
最高裁第二小法廷(千葉勝美裁判長)は10月12日に、「会社分割に伴う資産移転が債権者に損害を与える場合、元の会社の債権者は資産移転を取り消す権利がある」との判決を下した。
判決文は私にとって分かりづらいので簡潔に言えば、不動産会社が会社法に基づく会社分割(新設分割)で、設立した新会社に資産(土地・建物等)を移したため、貸付金を回収できなかった債権者(債権回収会社)が「詐害行為」だとして、所有権移転登記の抹消登記手続きを求めた裁判です。
最高裁判決の全文 URL=http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121012115428.pdf
詐害行為についてインターネットで検索したら、下記のように書かれておりました。
詐害行為 とは?
借金をした人(債務者)が、無資力の状態にある時に、ある状況に置かれて、故意に自らの有する資産の財産価値を落とすような行為を行なうことをいう。無資力とは債務超過の状況を意味し、債務者の支払不能や支払停止の状況になっている必要はない。
具体的にどのような行為が詐害行為に該当するか、いくつかの事例を挙げると次のようになる。
@ 債務者が、一部の債権者と共謀して、他の債権者を害することを知りながら、返済期限を繰り上げて
行なう一部の債権者への弁済。
A 債務者が所有する財産を時価よりも安く売却すること。
B 物的担保を持たない一般債権者に対してする代物弁済は、目的物の価格の如何を問わず詐害行為
となる。
C 債務者が持っている債権を、代物弁済として、一部の債権者に譲渡すること。
D 一部の債権者の債権の担保として、債務者所有の物の上に抵当権や質権や賃借権を設定すること。
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会社法の会社分割とは(大和総研)、
http://www.dir.co.jp/souken/research/report/law-research/commercial/07112902commercial.pdf
今回の「会社法に基づく会社分割」に関しては、以前から問題視されていたようで、「抜け殻分割」と言っている弁護士もいるようで、会社法の改正が進められていると聞く。同様にネットで検索してみたら、驚いたことに多くの弁護士が取り上げ、個々の見解を述べている。
「会社法の会社分割 最高裁判決」で検索してみて下さい。
その中である弁護士は、
『 この最高裁の判断で、全てが解決したわけではないが、詐害行為の取消請求が可能になったことで、今後、会社法の規定による新設分割が減少する可能性が出てきた。これにより、債務者は、新たな手法を模索する必要が出てきます。もっとも注意しなければいけないのが、既に会社法の規定による新設分割を終了した企業だと思います。
この判決を根拠に、今まで手を出せなかった目の前の資産を、確実な債権回収の手段にしようとしてくる可能性があり、過去の多くの新設分割を対象とした詐害行為の取消請求が起きるかもしれないのです 』と。
弊社で今回の判決を取り上げたのは、ゴルフ場の法的整理や売却の中で、経営会社の新設分割により不動産を含む資産や預託金等の債務を新会社に承継させるケースがあるからである。
最近のケースでは、元・南愛知カントリークラブ・美浜C経営会社・丸の内開発事業(株)が思い浮かぶ。預託金債権以外のゴルフ場事業を新会社・(株)新南愛知が継承し、旧会社が特別精算に追い込まれたものだ。
「会社分割は詐欺行為に当たる」とした訴訟も発生しており、丸の内開発事業(株)は一審では敗訴している(現在、控訴中)。今回の判決が出たばかりなので注目して行きたい。
他にも(ゴルフ場関連)多く見られるケースで、弊社でも数多くの法的整理及び売却ゴルフ場を取り上げてきたが、私なりに思っていたことで、「会社分割で新設した会社に、会員の預託金債権以外を継承させ、旧会社は法的整理により精算させる。新会社には負債が残らず、新たにゴルフ場運営をスタートする」
会員の預託金は紙切れ同然・・・プレー権がほしい方は新会社へどうぞ!
世の中には便利な法律があるもんだなぁ〜・・・・と
詐害行為の判断には難しい面もあるかと思いますが(私みたいな凡人には分かりません)、借りたお金は返すのが当たり前(返すための最善の努力をする)ではないでしょうか?
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