民事再生計画案の決議で、再生債務者が賛成票を不正に集めたとして、債権者が東京地裁の下した再生計画認可決定を取り消すように求めた即時抗告事件で、東京高裁第14民事部(犬飼眞二裁判長)は12月7日、抗告を棄却する決定を下した。
訴えられたのは水戸グリーンカントリークラブ照田コース(27H、茨城県)など会員制の3ゴルフ場を経営し、民事再生手続きを行ったエビハラスポーツマン(株)で、訴えていたのは水戸グリーンCCの会員。(平成18年2月17日、民事再生法を申請)
決定文によると、同会員は「(同社は同会員を)ひぼう中傷し、名誉を毀損する書面を会員債権者に送付し、(同会員の)社会的信用を失墜させ、(会社側)の再生計画案への賛成票を不正に集めた」とし、「民事再生法の174条2項3号の不認可事由(再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき)に当たり、再生計画認可決定は違法であるから取り消すべき」と主張した。
この即時抗告の経緯は、同会員の債権者として、
@ 弁済率は50%
A 継続会員や退会会員を区別することなく、年1億円を弁済(予算オーバーの場合抽選弁済)
・・・・などとした再生計画案を東京地裁に提出。
これに対して、同地裁は「(この計画案では)いつまでに弁済が終わるか定かではない」等の判断から、昨年7月31日に会員提出の計画案を不採用(決議に付さない)とする決定を下した。
その後の7月31日頃に同会員は他の会員に対して、
@ 同社の代表者は経営能力に欠ける
A 同社の計画案では、預託金は85%カットされ、時価にして数十億円のゴルフ場が代表者側
のものになってしまう
・・・・などと記載した書類を送るとともに、同会員の計画案に賛成するよう「賛同書」に捺印(=同社の計画案に反対)して返送するように要請した。
同会員の書類に対抗して、会社側は、
@ 同会員は企業買収の専門家
A 同会員は社会正義のためでなく、関与してゴルフ場を買収する計画
B 会員ではあるが5年以上もプレーしておらず、年会費も未納
・・・・などの記載もある書面を会員に配布し、同社の計画案に賛成するように求めた。
高裁に判断は、
@ 同社の計画案が否決されれば、破産手続き開始という事態となり、債権者の利益に適わないので、
会社が債権者に賛成を求めるのは当然
A 会社側と対立する計画案を提出して(会社側の計画案に)反対の意思を表明している債権者があ
る場合、(債権者側の)計画案の策定や履行に係る能力または見識の有無を問題にし、或いはそ
の計画案の内容を批判する内容の書面を債権者に送付することも、経緯や内容に照らして相当な
場合は許容される
B 同会員は、同社の書面は信用を低下させるなどと主張するが、書面は同会員の書類に対抗して
誘発されたもので、合理的な判断に基づく事実やそれに基づく評価が記載されている
・・・・などの理由から、同会員の主張を退けた。
高裁は、再生手続き中の会社が計画案に賛成するように要請する書面を債権者に送付することを許容しただけに、注目される判決といえる。
なお、東京地裁は高裁決定を受け、エビハラスポーツマン(株)に対して、再生計画認可決定確定を12月11日に下した。
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