
1・2月
古布を使った布箱
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11・12月
フラワーモチーフ
バスケット
子供の時代、自分が手に取ることのできる唯一の美しいものは、花や植物でした。
春になれば、かごを抱いて土手で摘んだ、れんげやすみれ、土筆。夕暮れにはしおれるとわかっていても編むことを止められないタンポポの花冠。
サクランボだと信じて植えた苗が、梅桃(ゆすらうめ)だったこともあったけれど、その可憐な花が咲き、少しずつ赤く熟していく実のさまは、充分私を楽しませてくれました。
使えるお金が増え、自分の興味の対象が広がるにつれ、草花への関心は薄れていったけれど、ものを作る仕事を始めてみると、やはり究極の美は、植物など自然の中にあるのだと改めて思い知るのでした。
花や実をまねて布や糸で作ってみる、とうてい本物にはかないませんが、作り上げたときは自分が創造主になったかのような興奮を覚えます。
子供の頃、憧れ夢見たのは、絵本やディズニーの映画に出てくるような深い森。一度でいいからあの限りなく続く大木の中の小径に漂うしっとりとした空気を胸いっぱい吸い込んでみたい、この思いは今も続いています。
そんな長年の憧れを形にするには2年の時間を要しました。
悩みつつ、迷いつつ、あきらめそうなになりつつも、何とかイメージへと近づけていきます。
あまりに思い入れが強すぎると冷静に判断するのがむずかしくなるもので、これが正解かと問われても、今はまだわかりません。
ただ、このバッグを眺めていると、森や花の香りを鼻の奥に感じ、蓋を開ければ、鳥たちのさえずりが聞こえてきそうな、そんな空想にいつしか導かれていくのです。
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