8月の終わり、朝夕が少し過ごしやすくなった頃、じっと猛暑に耐えていた庭の植物たちの幹から若葉が出始めました。
透き通る蛍光グリーンの檸檬の葉、周りが赤く縁どられた薔薇の葉、みずみずしさと柔らかさ、いのちそのものの輝きがそこにありました。
私たちがニュースの伝える数字に一喜一憂するのを気にも留めず、彼らは季節の変化をとらえ、成長を続けており、畏敬の念を抱かずにはいられません。
プリントの薔薇のモチーフを前に、その形をなぞるだけでなく、植物の神秘や生命力を表現したくて、記憶に残っている美しさの断片をひとつひとつ投影する手法を探りました。
ビーズをつけながらも頭の片隅には、この刺繍をどのように引き立て、全体をまとめていくか、という次なる課題が待ちうけています。
何かヒントになるものはないかと探していたとき、あるお店で2016年のフランスのDIY雑誌が30%オフになっているのに目が留まりました。
ビニールに入っているので、中身は確認できないけれど、まあ、いつかは役に立つだろうと1冊購入しました。
電車の中で袋をあけ、ページをめくっていった先に、これは、と思う写真を見つけました。
小さな写真なので(かつフランス語)詳しいことはわからないのですが、ウールのクッションカバーにもこもことニットモチーフのようなものがアップリケしてあります。形状は世界地図のようにも見えるけれど、色から推測して、おそらく「苔」をあらわしているのでしょう。
立体的なボリューム感とオーガニックな雰囲気が薔薇の刺繍と相性がよさそうで、実際の手法はわからないけれど、色や大きさの違うポンポンを並べてもこんなテイストになるのでは、との予測のもと、まずはポンポン作りから始めました。そして並べ方を試行錯誤しながら出来上がったのが今回の作品です。
ナチュラルガーデンの苔むしたとび石、そこに散る薔薇の花びらをイメージしていますが、ジオラマの森林を俯瞰しているような面白さもあります。
全体が柔らかい雰囲気なので、少しカチッとした印象を加えたくて、あき口や底のカーブをこれまでより直角に近い角度に変えました。
さらにマグネットを内包したピンクのスクエアな革を中央に据えてエッジをきかせます。
マチの上部にピンクの革を加え、数個のポンポンを青磁色のくるみボタンと差し替えて、刺繍の中にある色を強調することで全体のバランスを整えました。
こんなのつくれるの・・・と思われるかもしれませんが、①ポンポンは作られています②マグネットは革に縫い付けられています③持ち手は作られています
ということで少し安心していただけたのではないでしょうか。
今回はヴィンテージのフラワープリントを使っているため、ご用意できる数がいつもより少なくなります。
気になる方はお早めのご注文をお勧めします。
今朝みると、庭の薔薇に小さな蕾がついていました。シュガーピンクの愛らしい花に、今年ももうじき会えそうです。