作者より
QRコードによる決済や交通系カードで支払いができる場所が一挙に増えて、ポイントカードもアプリへの移行が進み、スマートフォンさえあれば、お財布を持たずに出かけることが可能になりました。
こんな日が来るなんて。携帯電話の収納がメインとなるバッグを作ることになるとは20年前には想像がつきませんでした。
この作品のために用意したかのようにしっくりと収まっているモダンな半幅帯、しかし最初は予定に入っていなかった素材です。
何かいい「赤」はないかな、と探していたとき、これは、と思い手に取ったのがこの帯。
改めてみると小物に使えそうなメリハリのある色と柄。なぜ今まで使わなかったのだろうと考えながら広げて見たとき、気づきました。そうか、そうだった。この帯、模様の部分が両面に糸が渡る織り方で、開くことが出来ないんだった…かといってこの厚みのまま使うには用途が限られるし、片面が隠れてしまうのはもったいない。
しかし、今回のアイテムだったら、この帯の「わ」の部分をうまく生かせるんじゃない?
両面使えるんじゃない?厚すぎるか?いやハリはあったほうがいいからいいかも、と急遽この帯をメインにしたデザインに変更となりました。
購入したのは、世田谷のボロ市か大和の骨董市だったような気がします。大正から昭和にかけて日本でもアールデコ調のデザインが流行した時期があり、その影響を受けたものと思われます。それに合わせてリボンを選び、ビーズは日本のヴィンテージビーズを中心に使いました。
ファスナーの引手もせっかくなのでモダンなものにしたいと思い、ビーズショップやハンズなどを当たったけれど、これというものが見つかりません。そんな時、ふと、娘が小学生の頃、ハマっていた「プラバン」のことを思い出しました。
今は透明以外のものもあり、黒を使ってみることに。初めての試みでオーブンに投入。娘に見てもらいながら「もう、いいんじゃない、はやく重しをしないと曲がるよ!」とか言われても、熱いんでしょ、そんな、なになに?なにで押さえればいいの?とか言っているうちに固まってしまったのですが、そのカーブが引手として使うにはつかみやすくて、ああ、これでいいかも!と無事完成。
入れ口のファスナーの引手には、古道具屋で買った電気の絶縁体と思われる白い陶器のリングを使っています。
帯の「わ」の部分はそのままにファスナーをつけ、両面にスマートフォンが収まる大きさのポケットにしました。私だったらあとは眼鏡をいれたいな、と思うところですが、やはりどうしてもお財布は持ちたいと思う時のために、これに収まるサイズのお財布をサブアイテムでご用意しました。
2013年にデザインしたものを今回はフランスのヴィンテージプリントで作ってみました。
そして、今回からマンスリーキットを「完成品」でもご注文できるようにいたしました。
ほしいけど、今ちょっと時間がない、とか小さいものはあまり得意ではないの…などのご都合もあると思いますので、その都度使い分けていただけるとよいかと思います。
お出かけの増える時期の便利なアイテムとして、装いのアクセントとしていにしえの人々のお洒落に込めた思いをまとってみませんか。
※できるだけきれいな部分を使用しますが、帯は古いもののため、薄く汚れのある場合もございます点をご了承ください。