スカートのキットは昨年の5月以来となります。
前の作品とくらべると、色数が多く、トーンが明るめです。この魅力を生かしながら落ち着いた雰囲気が出せるような工夫をしました。全体の印象としては、より縦長に近いシルエット、仕上がりの長さも10センチ近く長くなっています。
フリーサイズに対応できるように後ろ部分は今回もゴムなのですが、前面はより簡単に作ることができて、ボリュームが抑えられるよう、ギャザーをタックに変えました。作りはじめは布の張りがあるので、少し浮き上がりますが、時間の経過とともに落ち着いてきます。また、「ゴム」と書きましたが、実際はゴムと同じ性質で、かつ、ゴムを縫うときに起こりがちな「糸の切れ」が起きにくい素材を使っていただきます。
シャープな印象を与えるためにストライプ柄を合わせたのは今回も同様ですが、グリーンのストライプはファインビスコースという、てろんとした質感の生地で自然なドレープが生まれます。
柄を横にして裾に回したテンセル混紡のストライプの生地は適度な重さがあり、裏側にも回して二重で使うことによって錘効果が高まるようにしました。
なんといっても、やはり主役は着物地です。前面に使ったのは萩が描かれた絹の絽。萩といえば、こぼれんばかりの濃いピンクの花と連なる楕円形の葉っぱを思い浮かべますが、この柄はその葉が花のような濃いピンクの濃淡で表現されているのです。一瞬驚かされますが、この大胆な配色によって、萩の持つ特徴がより強く迫ってきます。髪の毛のように繊細な線で引かれた輪郭とうらはらに斜めに流れる勢いのある構図、意表をつくデザインは何度みても心を強く動かされます。
後ろ部分に使った「く」の字のような横縞はメリハリのあるコントラストがモダンで北欧のテキスタイルを思わせます。生成りの麻の凹凸のある地が陰影を添えています。
着物地はできるだけそのままの生地を生かしたいので、両端が「みみ」になっています。そして今回はそれ以外の合わせる生地の両側をロックミシンでかがっていますので、中表に合わせて1度縫うだけで大丈夫です。
裏地は余分な湿度や熱を放出しやすい春夏用のものを使用していて、通常の裏地に比べて伸びやすべりがないので、扱いやすいと思います。
前面、後ろ面と一応決めていますが、どの生地を正面にしてもそれほどシルエットが変わらないので、合わせるものによってクルクルと正面を変えてもいいかもしれません。とても軽やかなので、重ね着にも応用できます。レギンスやパンツと合わせてオーバースカートにしたり、長めのチュニックと合わせてアンダースカートとして楽しんだり使い方はさまざま。
眺めているだけでも、心がウキウキしてくるスカート、身にまとえばきっと気持ちもフレッシュな気分で新しいシーズンを迎えられるはず。