Needlework Marble 大西淳子

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9月のキット

ブレードとレースのモノトーンバッグ

 
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作者より

今回の注目点は何と言ってもブレード。カール・ラガーフェルドがデザイナーを務めていた1980年代のシャネルのコレクションで使用されたもののデッドストックです。

入手したのがひと月ほど前。どのように使おうかと考え続けていました。

キルティングやチェーンと組み合わせて、いわゆるシャネル風のバッグにすることが一瞬頭を過ぎりましたが、そうではなく、その素晴らしいエッセンスは踏襲しながらも、現代らしい感覚の、使いやすいものにしよう、それこそがこの素材との出会い対する敬意だと感じました。

どのみち、このブレードだけでは作れないので、まずはあわせる素材を見つけなければなりません。いつもより長い時間を想定して家を出ました。そして素材を見る前に自分のイメージをより明確にする「本」を求めて本屋に立ち寄りました。

雑誌や写真のほうが役に立ちそうですが、なぜか小説やエッセイによってイマジネーションが高められることが多いのです。文字というシンプルなものから映像を浮かび上がらせる工程が想像力を高める準備運動のような働きをしてくれるのかもしれません。

幸運にも、本屋に入ってすぐ『ミッテランの帽子』という1980年代のフランスが舞台となる小説に出会うことができました。いまのシチュエーションにこれほどぴったりな本はない!とすぐに購入し、カバーに記されたあらすじを読むと、いくつかのストーリーに分かれていて、どれも主人公がミッテラン(フランス大統領だったあのミッテラン)の帽子を手にしたとたんに人生が変わり始めるという…。まさに、この本こそ、私にとっての「ミッテランの帽子」!よし、この力を借りて、持つ人の人生がよりよくなるようなバッグを作ろう!と私の意気はぐんぐんと上がり始めました。

小説の中でレストランが出てきます。ワインからはじまり、前菜からデザートまで克明に描かれるメニューにうっとり。

また、登場人物の中に調香師が出てきます。彼が香水を分析する際に挙げられる香料の名前の数々にも、香り好きの私はわくわく。

これをまねて、その日買った材料を自分の頭の中で反芻してみます。

繊細な陰影が美しいコットンのリバーレース、シンプルに見えてラメ糸とブークレーの糸の織りによる陰影がすばらしいイタリアのテキスタイル、微かなきしみがそれと感じさせてくれるシルクのコード…よい素材の常であるように、時代や国を超えてそれらは違和感なくまじりあい、奥行のあるモノトーンの世界を作り上げてくれました。

持ち手部分のチェーンは予備のものを加えることでショルダーバッグくらいの長さに変えることもできます。一見むずかしそうに見えるかもしれませんが、この部分の作り方動画をご用意しましたので、レシピと併せてご覧ください。

また、黒に黒のビーズ類を付けるということで実物大のカラーコピーが少し見づらいのですが、これも動画でサポートさせていただきます。(マチのコードを通す部分も動画があります)

小説の登場人物も、そして私たちも気づいているのです。帽子に不思議な力が宿っているのではなく、その力は、その決断はすでに自分の中に潜んでいて、ほんの少しのきっかけで現れ、人生を変えてくれるのだと。

かといって、そういうものとの出会いのない人生や、そう思えない人生は少し寂しいですよね。

新しい扉を開けようとする人の背中をそっと押してくれるような、ささやかでいとおしいものを作り続けていきたい、あらためてそう思いました。

キットについて

キット価格 ¥17000(税別)
サイズ 18×30×10センチ
キット内容 シャネルデッドストックブレード(4種)、ブレード2種、シルクコード、サテンリボン、イタリア製テキスタイル、コットンリバーレース、デッドストック織地、綿サテン、シルクジャガード、コットン3種、モアレ、メッシュ、ベルベットリボン、チェーン、ビーズ3種、スパングル、隠しマグネット、底板、薄手接着芯、接着キルト芯、平ゴム2種

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