今年最初のマンスリーキットは、国産のオリジナルテキスタイルを提案する『NUNO』の生地と着物地を合わせたバッグにしようと決めていま
した。色合いは春らしく柔らかな色を中心に、形はどちらかというと、まあるい感じ。おおまかなアイデアをいつも頭の片隅に置きながら、どこか
に新しさを感じてもらえるものにしたい、そのためには何を加えればいいのか、何をポイントにすればいいのかを考え続けていました。
1月の半ばに渋谷を訪れた際、西武百貨店の「イデー」で気になるブレードをいくつか入手しました。マンスリーキットに加えられないかと、帰
宅してから集めておいた材料に合わせてみます。
「黒」を加えることは想定外だったけれど、黒を「墨」と考えれば「和」のアクセントになるかもしれない、同時に持ち手を黒の丸型にしようと
いうアイデアがひらめき、方向性が見えてきました。
さらに私の作品の定番素材であるビーズを大きめのものにして、装飾で立体感を出すことも試してみたくなりました。
仕上がった作品は、新春を寿ぐ和菓子のようなやさしい色と梅のつぼみに似たふっくらとした形で、素材となった「和」の持ち味がよく感じられ
るものになったと思います。その中で全体をキュッと引き締める黒のモダンさ、いつもより主張の強いビーズに新しさを感じてもらえたらうれしい
です。
展覧会に足を運んだり、映画を観たりといつもより少しゆったりと過ごした1月、そんな時間の中で出会ったアーティストたちの姿勢が自分の中
で静かに浸透していくのを感じます。同じことはやらない、常に新しいこと、誰もやっていないことを探し続ける、その考えや姿勢によって作られ
たものは、時間を経ても古びることはありません。何十年前のものであっても、その作品はフレッシュで今を生きる人々の胸を震わせます。そうあ
り続けることは決して容易なことではありませんが、誰かに幸せな瞬間を与えていると感じられれば乗り越えていけるのかもしれません。
彼らが一様に口にするのは、楽しいから、好きだから続けてこられたという言葉。その背中を遠く見つめながら、大好きな『fresh』という
言葉を常に思い起こしつつ、また新たな1年を歩んでいきたいと思います。