子供が生まれたとき、たくさんの本をいただきました。
その中の1冊、『チャレンジ ミッケ!』に私は生まれて初めて出会いました。
見開きいっぱいに広がるワクワクするような世界に一瞬で目を奪われます。
効果的に使われた鏡が作り出す、平面とは思えない奥行き、そして現実が反転した見慣れぬ世界。
どこから集めてきたの?と言いたくなるアンティークの小物やちょっと不気味な標本などが、テーマに沿って巧妙に配置された迷宮。
「みつけられるかい?」という問いかけによって隠されたものたちを探す行為はさらに意識を引き込み、自分が小さくなってその世界に入り込んだような錯覚を覚えます。
数か月前に本屋で最新刊を見つけ、なつかしくて自分用に買ってしまいました。寝つきの悪い夜にながめると適度に頭を疲れさせ眠りに誘ってくれます。そのうち、なんとなく『ミッケ!』のようなバッグを作ってみたいと思い始めていました。
ぱっと見は、きれいなバッグ、でも、よーく見てみるとさまざまなものが詰まっている・・・みたいな。
今回のバッグのベースとなる布は2種類。
前面ではわかりにくいのですが、シースルーのほうは『竹ノ花』という名前がついています。モチーフを見てなるほど、と思うかどうかは別にして竹の花は120年に一度しか咲かないという話をきくと、不思議なパワーを感じます。
もう一つのほうは『クレマチス』。ふわふわの起毛とレースになっている部分との対比によってツル性の植物の強い生命力が表現されているようにおもいます。
メインテーマである「2020」の文字が2パターン配されているのはわかりますか?
リネン、シルク、レザーで作られた花々は空想のものですが、どこか記憶の情景を呼び起こすような素朴さと懐かしさを意識して作りました。
色合いを抑えめにし、材料もあえて種類を絞り込み、同じ素材を別のところで使ってみる。こうして使うことで違う表情が見られるんだということをメッセージのひとつにさせていただきました。
イヤーバッグは、みなさまへの1年の感謝の気持ちを込めて作っています。できるだけ取り組みやすいよう、モチーフや持ち手はほぼ完成品という状態で今年もご用意させていただきました。
ところでみなさん、今、ハンドメイドが再び熱い注目を浴びていることにお気づきですか?今回の流れはかなり「本物志向」へと向かっているなあとよんでいます。
「最近またお裁縫がはやっているらしいわよ」と言われた時に、「あら、今頃?」と余裕のほほえみで返す、そんなマダムたちを街中で見つけるのが2020年の私の楽しみになりそうです。