今年2月に発売したマルチポーチが再び登場です。自分で使っていて手に持ちやすい大きさ、これまで別のケースに入れて持っていた通帳やおくすり手帳を収めることができる便利さが気に入っています。
今回は抑えた輝きと繊細な陰影の刺繍ブレードをメインにリボンを並べて作る、裁断や縫い合わせの工程が少ない、作りやすいデザインです。
作品のテーマは「香港」。ここしばらく不安定な情勢が続いています。デモの映像を眺め、香港という言葉を耳にするたびに胸を過るのは悲しさ、そして懐かしさ。
20代の頃、同じ職場に香港大好きの女性がいて、現地の飲茶の美味しさと安さ、アウトレットのブランド品の豊富さを熱く熱く語る様子は今でも記憶に焼き付いています。そして彼女の案内で初めて訪れた香港の、アジアとヨーロッパが混ざり合った雑多と優雅さが両立するカオスに私も魅せられ、間を置かずして再訪してしまうのでした。
一方で香港はワールドワイドなビジネスタウン。キャリアを積みたい同年代の女性たちはこぞって香港を目指しました。半年くらい前、当時の彼女たちを取材したドキュメンタリーをNHKのアーカイブ番組で偶然目にしたことがあります。一様に前髪を立ち上げたロングヘアの彼女たちの、前だけを見つめる姿におのずと熱い何かが胸によみがえりました。本国への返還、世界の中で台頭してきた中国の力によって翻弄されるかの国において、彼女たちは今、どうしているのでしょう。
若き日の憧れや思い出がつまった大切な場所が、かつての自由や活気を失い、いまだ和解の糸口の見えない状況をただ見つめているだけの自分。せめて、祈りたい。その気持ちを形にしたい。ユーミンが「揚羽のあでやかさ」とうたったあの街の輝きをブレードに託し、それ以外の材料はできるだけ無地に近い、それでいて深い奥行きが出る織り地を選びました。いつまでも輝いていてほしい、そして長い年月の中で培われてきた人々の知恵と力が良い方向に導くと信じているとの想いをこめて。
サイズ、仕様は2月の作品とほぼ同じですが、このデザインなら見せたい!と思われる方がさらに多いのではと思い、オプションで長さ調節のできるショルダーストラップをつけられるようにしました。その際、ファスナーは真ん中から開くタイプのもの(画像をご参照ください)がより便利かと思い、サンプルに使用したメタルのものとの2つから選べるようになっています。
お財布以外にもスマートフォンケース、眼鏡入れとしてもお使いいただけます。後ろ面のポケットにプリペイドのカードを入れてピッとできるのは毎回お財布を開けるのが面倒な旅行の時など本当に便利です。
花のように可憐、でも実力もしっかり備えている頼もしいポーチをぜひあなたのお供になさって下さい。