雨の多かった7月、本当にあの夏の暑さはやってくるのかと訝ったものですが、心配無用と言わんばかりに今年も強烈な暑さが8月にはやって来ました。
決まったところにビーズをつけるなど比較的単調な作業は、あごと首の間に汗を溜めながらでもできるのですが、考えること、新しく生み出すということは茹だりかけた頭ではなかなかきびしい。
そんな時にモチベーションとなってくれるのは、良い材料、これで作ってみたいと思わせてくれる材料と出会うことです。
蔵前のモクバのショールームを訪れるたびに、もう何年も前から使ってみたいと思う素材がありました。その一画だけに漂う独特の緊張感。きらびやかというよりは星の瞬きのような静かなきらめき。棚には『pure silver coated』と書かれています。純銀でコーテイングされた糸。それってよくアンティークのテキスタイルに使われているあれよね。このきらめきは時間の経過とともに落ち着いた色合いへと変わっていくのかしら・・・憧れを抱きつつも、なかなか手が出ないのは、ひとつには値段。文字通り普通のブレードとはひとケタ違います。そして仮に思い切って買ったところで自分が使いこなせるのか、という不安がありました。
でも、今の私を奮い立たせてくれるものはこれしかない!マンスリーキットも2か月ぶりだし、ここはちょっといいものを作ろう、とついに決心しました。
これらを購入した時点でバッグデザインはほぼ決めていたので、課題はこのブレードの魅力を最大限に生かすためにどのような形で組み込むかということ。
待ち受けるメンバーにも不足はありません。一枚の布のように見える両脇はベージュの布にインポートのレースを重ねてビーズ刺繍をほどこしたもの。口周りのパールの輝きを持つ白はイタリアのテキスタイル。そしてリボンが織り込まれた(!)マチと後ろ面の布はフランスのデッドストック。トリコロール国旗のついたタグに記されていた値段は4.1メートルで68000円。経年によって若干の色ムラや小さなシミが出ているおかげ(?)でこの何分の1で買えましたが、こちらもこの日のためにずっと大切にしまっていた素材。
中央にブレードを配することは決めていたので、パッチワークのような手法でベースの生地にブレードを乗せたピースを並べ替えながら、あーでもない、こーでもないと悩むこと4時間。ダメだ、もう頭が沸騰するぅと叫んだあと、天の声が。
「初心にもどれ」。そう、私がショールームで見て感動した、ブレードが整然と並ぶ情景を再現すればいいのではないかと気づいたのです。並んだブレードはお互いがお互いを引き立て、さらにレースのビーズにもさらなる輝きを添えてしっくりとおさまってくれました。
底には底鋲に見立てたメタリックシルバーのボタンが5つ。もうどこに出しても立派に役目を果たしてくれる装備。華やかなシーンが多くなるこれからの季節にも大いに活躍してくれると思います。
パッケージを開いた時のワクワクする気持ちをイメージしながら、ぜひ挑戦していただけたらと思います。