アップリケの手法を使う今回のイヤーバッグは、立体の時と比べて選べる素材の幅が広がる分、生地選びにも自ずと熱が入ります。
少しでもふさわしい素材を見つけるため、暮れのご挨拶を兼ねて馴染みのお店を回ると親しい店員さんと話しが弾みます。先日も「渋谷パルコ」の話から始まって、チチカカ、ラ・パレット、MCシスター、オリーブ、高橋永順のカレンダー・・・懐かしいお店や雑誌のことなど共通の話題がいつまでも途切れません。ひとしきり盛り上がったあとで、ふと、「こんなに早くいろいろなことが変わってしまうなんて、思ってもみなかった」というつぶやきが聞こえました。
そうです、私だってあの頃はすべてがこのまま変わらず続いていくものと信じて疑いませんでした。
一方で新しい技術や道具をありがたく使っている自分もいて、複雑な思いが交錯します。
ただ、こうしてなつかしく話している時間の楽しさは何ものにも代えられない私たちの宝物。あの時見たもの、ときめいた気持ちを大切に、自分の仕事に反映させることができたら・・・作品を見た時にあの頃と同じようなワクワクする気持ちを思い出してもらえたら、作り続けることに少しは意味があるのかなと考えるこの頃です。
バッグやブーツを縫い留め、ラインストーンで飾っているとき、ふと、デパートのショーウインドウを思い出しました。ガラスを隔てて見つめる、新しいシーズンを彩る最新のアイテム、それを引き立てる気の利いた小道具たち。その華やかさに仕事の疲れをひと時忘れさせてもらいました。ものは単なるものでなく、私たちのハートをぐっと掴み、明日への活力をくれる大切な存在だった。それらに関わるデパートや雑誌が苦境に立たされている時代ではあっても、何とかともしびは消さずにいてほしい。
いろいろなパーツがあって作るのは大変そうに見えるかもしれませんが、モチーフはすべて使用する大きさにカットされ、「ブーツ」は完成形に縫い合わされています。「バッグ」は本体、口金はカット済なのでレースを重ねてスパングルを付けるだけ。持ち手もちゃんとハトメをパンチングしたものをご用意します。
もちろん、飾るだけでなく実用的に使っていただけるよう、内側にポケット、口側にマグネットが付きます。
部屋を片付けたら定位置に飾った今年のバッグと掛け替えましょう。見るたび、おしゃれごごろを思い出すように。時代はまだまだ私たちのものですから。