今年最初のマンスリーキット、とつづりながら振り返ると、すでに15年が経っていたことに我ながら驚いてしまいます。
マンスリーキットと言っても、実際のところは隔月くらいのペースなのですが、始めた時は15年後のことなど全く想像していませんでした。
語り始めるといろいろ出てきそうです。
でもそれはまた改めてということにしましょう。
ただ、こうして続けている中で、いくつか自分の中で「定番」と呼べるものが出来たことは収穫と言えるかもしれません。
少しずつ改良を重ね、作りやすさや使いやすさにおいて少しは自信をもってお勧めできるデザイン。
今回のバッグの元になった、両脇がポケットのボストン型のバッグもそのひとつです。
デザインの過程で迷ったときは常に「自分が使うのだったらどちらが好きか」という視点で考えてきました。
しかし、今回はそれをちょっと脇において、より多くの方々に喜んでいただけるものとは何か、を私なりにじっくりと考えてみました。
定番となっているこの形において、ひとつ欠点をあげるとしたら、書類やノートといったA4サイズくらいのものが収まりにくいということがあると思います。
それを解消するためには、「深さ」が必要となります。バランスを失わずに目的を達成できるラインとして、プラス3センチを試みることにしました。
A4サイズがゆったりと収まる上に、これによって脇ポケットも深くなるので、サイズが多様化したモバイルフォンにも対応できるようになりました。
縦長感をあえて強調するために持ち手を少し長くしました。印象が新鮮になったのと同時に肩にも掛けやすくなりました。
せっかくA4サイズが入りやすくなったので、お仕事でも使っていただけるよう、色はモノトーンに決定。
バッグが大きいので装飾は小さなビーズではなく、長めの竹ビーズや大き目のヴィンテージパーツ、ボリュームのあるブレードなどで立体感を加えます。
スパンコールも束で使用することで存在感を持たせ、レースは生成ではなくあえて白で全体にメリハリを。
個性的なプリントがベースとなり、インパクトのある素材で構成されながら、ふとした瞬間、1枚の布のように馴染んで見えるのは、斜めのラインを多用したことの効果かもしれません。
線の流れや角度が「自然」に近く、眺めていると、坂道のように見えたり、切り取られた窓辺の景色のように見えたり・・・記憶の中にあるような風景に妙に心が落ち着きます。
生地合わせの最後に「赤」を少しだけ加えました。
正面からは見えないようにして、時々ちらりとのぞく程度。
それが全体に奥行きを与えてくれる効果を放ち、内側の赤へと自然につながって、実用だけでなくデザインとしての「深み」も感じさせてくれます。
自分の作品に向かう、集中して自分の好きな世界を追い求める姿勢はこれからも大切にしたいと思います。
ただ、うつむき姿勢の『虫の眼』ばかりではなく、もう少し離れた視点の『鳥の眼』を持って自分の作ってきた世界を見つめられる、そんな余裕も反映できるこれからでありたいと思います。