この時期になると、ユーミンの『晩夏』という歌を思い出します。それはこんなふうにはじまり・・・
~ゆく夏に 名残る暑さは 夕焼けを吸って燃え立つ葉鶏頭 秋風の心細さはコスモス
サビはこう続きます
~空色は水色に 茜は紅に 藍色は群青に 薄暮は紫に
口ずさむと、記憶から呼び覚まされた色や音や香りが脳内に満ちてきます。
美大出身のユーミンの、特に荒井由実時代の歌詞は色彩が豊かで、色合わせに悩んでいるときなど聴いてみたくなります。
また、写真や絵画から色合わせのヒント求めることもあります。フェイスブックでも紹介しましたが、今回はレオナール・フジタの『調教師とライオン』という絵画に漂う1920年代パリのモダンで少しデカダンスな香りを頭にいれて色のバランスや柄のモチーフを選びました。
強めの色調の時は、具象ではなく、幾何学的な柄の生地を使うと抵抗感少なく受け入れられるような気がします。ただ、直線的なモチーフが続くとデザインから動きが消えてしまうので、大き目のビーズをバックルのようにあしらって新たなリズムが生まれるように配慮しました。スナップは刻印の入った特別なものを使いますが、通常よりひと回り大きいものを選び、あえて主張させました。
仕上がった時のバランスは、どこか大正時代の銘仙着物の配色のようにも感じます。考えてみると大正は西暦でいうと1920年代、遠くはなれたフランスと日本で同じ色が人々の生活の中にあったという不思議、そして日本に別れを告げ、パリに骨を埋める覚悟を決めたフジタから溢れ出た色がどこか祖国を感じさせるという切なさ。色の雄弁さを再認識できたのは、この刻々と風景が変化する今の季節と関わりがあるのかもしれません。
乾いた空気の中で斜めに差し込む秋の陽射し、目の前をよぎった若い女性のワンピースの上で揺れていた小さなポーチに目が留まりました。スマートフォンだけが入るくらいの大きさで、バッグというよりはアクセサリーのような軽快な存在感。
今回、「長財布」というカテゴリーでご紹介させていただきますが、よかったら持ち手やコードを加えて、外に連れて行って下さい。それくらいの自信をもって(!)お勧めする作品です。