「アンティーク」や「ヴィンテージ」と並んで最近は「ブロカント」という言葉をインテリア雑誌などで目にします。正確な意味を知りたくて調べてみたところ、『美しい　ガラクタ』という記述を見つけました。

　相反する言葉からなる興味深い表現は見事に本質を捉えています。同じものを見て、取るに足らないものと感じる人もいれば、運命を感じて身近に置きたいと思う人もいるでしょう。

　実用の枠を超えて収集されたモノたちで構成された独特の空間は、どこの誰の部屋かもわからないのに、なぜか親しみや懐かしさを感じ、画像からは静かな知性が伝わってきます。

　そして、これこそ、自分が手芸によって表現したいと思っていることのような気がして、誘われるように生地を並べ、構想を考えていました。

　セピアがかったフランスの花と鳥のプリント、素朴なアメリカ製のフィードサックのハギレ、織りでモチーフが描かれたイギリスのカーテン・・・素性も入手した時期も違うけれど、どれも私自身が選んだもの。合わせていく際のコツとしては、まず、テーマとなる色を決め、それに沿って生地の配分を考えると良いように思います。このバッグの場合は水色と淡いピンクが基本色で、爽やかさを添えるための白を通常より多めに加え、全体を引き締めるための色を所々に配置しています。古い生地の風合いを尊重して、強い輝きのビーズやパーツは避け、大きさや形で全体に奥行きや動きを出します。

　良い点ばかりを述べてきましたが、時間を経たものには弱点もあります。まずは強度の問題。そして「今」という時間にこれらが上手くなじむための仲介役がやはり必要なのです。その大役を担ってくれたのが、ユーズドジーンズのようなブルーのストライプのリネン。IAN MANKINというロンドンのファブリックブランドのもので、ビスコースとの混紡により見た目からは想像できない柔らかさとしなやかさがあります。このままでも十分に古いものとの相性は良さそうですが、一度水に通してさらに馴染みのよい風合いを出してから使うことにしました。

　問題は持ち手。そう、常にこれはバッグ全体のバランスを左右する重要ポイントです。バッグ本体の引き締め色として使っているパープルを持ち手にも部分的に使ってみようと生地を探しに行ったとき、このストライプが目に留まりました。画像では伝わりにくいかもしれませんが、上等な着物を思わせるような深い紫がベース。タグにはイタリア製とありました。

　当初は持ち手を通す部分だけに使うつもりだったのですが、バッグ全体にインパクトを与え、そして洋服に接する部分がモダンな生地であることによって、持つ人と古い素材をうまくつないでくれるのではという期待を込めて持ち手本体にも使用、ただし片面はイギリスのヴィンテージリネン・プリントにして本体とのバランスを整えます。

　そして最後の最後に加えた、大き過ぎるとも思える、使い込まれたイギリスのカーテンリングはバッグに打たれた読点、まさに「マル」なのです。フラップのファスナーはこれによって楽に開閉できます。(うむ、これは二重丸に値しますね)

　フラップを上げれば、そこにも便利なポケットが2つ。もちろん内側にもポケットがついています。

　持ち手の長さを変えることで広い用途に対応できるほか、バッグの表情の微妙な変化も楽しめます。

　今回は古い素材を多用しているため、いくつかのご注意を添えさせていただきます。

1．プリント生地の柄行がサンプルと若干異なる場合がございます。

2．ヴィンテージのボタンやアクリルパーツは、できるだけ近いデザインのものをご用意しますが全く同じものでない場合もございます。

3．カーテンリングはA　木製・アイボリーのペイント、B　金属製・装飾あり、 C　金属製・装飾なし(いずれもイギリスヴィンテージ)の3種類のいずれかを選んでお届けします。ご希望のある場合は注文フォームの備考欄にご記入下さい。先着順にご希望に沿わせていただきますが、外れてしまう場合もございます。

　上記をご理解いただき、完成形を想像しながら知的な創造の時間を楽しんでいただけることを願っています。