がま口の魅力とはなんでしょう?
まずはその名前に相応しい愛らしくユーモラスなカタチ。本で読んだ話に拠ると「がま口」という呼び名は日本独特のもののようで、このことを思うにつけ、ご先祖たちの言葉のセンスの素晴らしさに拍手を送りたくなります。
また片手で開けられるいう利便性も長く愛され続ける理由のひとつのようです。
そして、これは個人的な意見もしれませんが、開け閉めするときのあの、パチンという音も魅力のひとつとして数えたいのです。
かつてのお母さんの買い物籠の中のお財布から、ヨーロッパの淑女たちの装いを彩ったビーズバッグまで、がま口は常に女性たちの生活に寄り添ってきました。パチンと音をさせて口金を閉めるとき、彼女たちは心のなかで「よし!」と呟いてきたように思うのです。今日の買い物、これで完了、身だしなみ、これで大丈夫。その確認を共にしてきた愛しき相棒に特別の思いを抱いてしまう感覚は時を超えて今の私たちにも受け継がれています。
『アトリエ日記』(※1)にも書かせていただきましたが、偶然口金を使った長財布のキットを目にして、何だかとても自分でも作ってみたくなりました。
材料についてあれこれ思案していたとき、年末の引っ越しに伴う整理で出てきた、バッグのキットにするには分量的に足りないヴィンテージテキスタイルのことを思い出しました。
そうか、お財布なら何個か用意できるかも。生地を引っ張り出し、並べてみます。おそらく150年は経っていると思われるフランスの生地たち。
お財布というのは出し入れの多いアイテムなので、それなりの強度が必要となります。幸い、コットンや麻を使った生地ばかりであったことと、サンプルとして未使用のまま保存されていたものがほとんどなので、大切に使ってもらえれば問題ないでしょう。
問題がひとつクリアされると、ちょっと欲が出てきて、これだけの素材をお財布で終わらせてしまうのはもったいないような気がしてきました。
それで、内側の仕様をこれまでの長財布のキットと少し変えてみようと思いました。
さて、ここからがひと仕事。少しでも容量を増やすために、また口金自体にかかる負荷を少なくして、はずれるリスクを減らすために、ファーストサンプルのピンと張りつめたフォルムから若干のゆとりがあるものに変更。
利便性は少し悪くなるけれど、財布機能は片面のみにして、もう片面にはチケットなどが入れられるようにしては?
最近は油断しているとお財布の中がすぐコインでいっぱいになっちゃうのよねぇ…コイン入れを別に作ればそれも解消されるんじゃない?
あっ、長財布にコインを入れなくていいんだったら、ファスナーポケットに口紅やお薬をいれて、ちょっとしたポーチにもなる!がんばれば、スマホも入る。小さいほうのがま口、大きいほうに入るよ!
作り直しは大変だけれど、目標があれば乗り越えられます。
そう、イメージとしては、お財布兼クラッチバッグ。最近のファッションショーではモデルがクラッチの持ち手を手首に通し、掌でさり気なく掴んで歩く姿をよく目にします。
ということで、持ち手もしっかりとしたものにしましょう。実は小さいほうのがま口のチェーンは取り外しができる上、この持ち手とほぼ同じ長さなので、持ち手と一緒にして、さらにゴージャスに見せることも出来るのです。
チェーンに組み込まれたビーズは、大きいほうのバッグを飾る個性的なヴィンテージパーツと色を合わせています。
でも、口金って難しくない?という不安のある方は、まずはこの小さいほうからトライして感覚を掴んで下さい。
それでもまだ心配、という方、どーしてもダメな場合は最後は私が面倒みますから!!ここは安心して挑戦してください。
街に出るたびに新しいがま口やがま口バッグに出会います。もはやブームを超え、確立された存在として日々進化を遂げているもよう。
私自身、探究することはまだまだ多く、『がま口マイスター』への道のりは険しいけれど、愛好家のひとりとして、今年はその魅力を地球規模で拡散していきたいと思いま~す。
★生地によっては柄行がサンプルと異なるものもあります。
★口金を取り付ける際に必要な紙ひも、ボンド(2種)はキットに含まれています。
★専用の取り付け器具も販売されていますが、今回は大きめのマイナスドライバー、ラジオペンチ、目打ちがあれば対応できます。
※1 アトリエ日記は2012年から2016年まで掲載されていたコンテンツです。現在はフェイスブックにて継続掲載中です。