「12月」の声を耳にすると、子供の頃に読んだ童話や物語の世界が脳裏によみがえります。私が小学生だった頃、定期的に購読していた本は、毎月本屋さんが自転車で家まで届けてくれていました。母の婦人誌と共に子供には全集の中の1冊が届きました。最初は兄と共有の図鑑、その後は私のためだけの名作全集。アンデルセンやグリムの童話、シートン動物記やファーブル昆虫記が含まれた文字が多めの絵本。絵の表紙と同じイラストが描かれた金色の箱が眩しく、本の真新しい紙では何度か指を切ってしまった記憶があります。
それらの絵本には「12月」が舞台となったストーリーが多かったように思います。そこに描かれた色とりどりのキャンドルのまあるい輝き、ステンドグラスから差し込む透明感のある色の調和。そしてその華やかさとは対照的に静かで敬虔な時の流れ・・・この記憶は季節の移り変わりと共によみがえってきて、自ずと作品に反映されているような気がします。
さて、思い出の話はこれくらいにして。今回のバッグはご説明したいことが山のようにあるのですから!
まずは、生地のはぎ合せです。最近の作品には時々登場する「斜めはぎ」を是非キットでもやってみたかったのです。斜めにはぎ合せる生地は裁断の時にロスが出ますが、それゆえに贅沢とも言えます。
さらに今回はベクトルの違うラインを突き合わせてさらに動きを出しました。その合わせ目にはスリットがありモバイルフォンやパスケースが入るポケットになっています。
どの生地やブレードも個性と奥行があって、小さなフレームの中に濃厚な世界が息づいており、さらにそこに加わったビーズ刺繍が更なる立体感を添えてくれます。
後ろ面の生地の切り替え部分にもポケットがあります。こちらはしっかりと閉じられるファスナーポケット。
マチは落ち着いたピンクにビニールを重ねてキルティングをしています。ビニールはモダンな印象を出すことに加えて、ハリも生まれるので、バッグのフォルムがきれいにキープできます。
口布の部分は画像ではわかりにくいかもしれませんが、コーデュロイに水玉のエンボスが入っています!(カワイイ)
バッグのサイズはややコンパクトですけれど、口が大きく開くので、見た目以上に使いやすいと思います。
『アトリエ日記』(※1)にも書きましたが、持ち手は完成品をお入れしますよ!!焦げ茶に赤の点々が愛らしいツイードで包んだ細めで長めの持ち手を、革でしっかりとホールドし、革包みのカンに繋ぎます。
そして裏地も大きなポイント。表のキュートさを嬉しく裏切ってくれるシックな千鳥格子。小さいピッチの千鳥格子はよくみかけますが、ひとつのモチーフが15ミリほどもあるのは珍しいです。そして織り地ならではの陰影、小さな風車が並んでいるようにも見えます。
まだまだ、これで終わりではありません。底だって見て欲しい!赤と黒の大きさの違うボタンを合わせて「脚」を付けてみました。
新しい環境のテーブルの上に仕上がったバッグを置いてぼんやり眺めていると、この1年いろいろあったけれど、こんなかわいいバッグが出来たんだから、終わり良ければ総て良し、かな?と思えてきました。
皆さんも是非、今年1年頑張った自分を十分に労い、ご褒美をあげて下さいね。
※1 アトリエ日記は2012年から2016年まで掲載されていたコンテンツです。現在はフェイスブックにて継続掲載中です。