Needlework Marble 大西淳子

Monthly Kit Archive

2013年1月のキット

ふたつの帯を使った
バッグ

 
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作者より

 今年最初のマンスリーキット、実は当初別の素材を使うことを予定していました。

 しかし、12月に横田基地を訪れた際、ショッピングモールにあった和骨董を扱うお店で出会ったふたつの帯、茶のほうは伝統的な亀甲のモチーフをさらりとモダンデザインに昇華させたそのセンスで、黄色のほうも偶然亀甲柄なのですが、こちらはあくまでも正統派のデザイン、そのまっすぐで力強い、圧倒的な存在感でもって私の創作意欲を刺激しました。これを形にしないままでは、気になって次に進めない、とまでに思わせられた素材ですから、組み合わせる材料選びにも力がはいります。

 ビーズはやはりヴィンテージ、この日はあいにくの雪でしたが、中目黒のジュリアンまで出掛け、帯と見比べながら棚のケースをひとつひとつ吟味して、ふさわしいものを選びました。

 その日新調したレインブーツを頼みに10センチ以上積もった雪を踏みしめて駅へと戻り、電車を乗り継いで吉祥寺へ。

 裏地はぜったいに春色のモアレにしたく、豊富な色の中から春の花を思わせる優しい黄色を選び…帰りの電車の中で、具体的なイメージを固めていきます。

 そして翌日、気持ちよく晴れた空から降り注ぐ自然光の明るさの中で、選んだビーズをそれぞれの柄に当てはめていきます。

 勢いに任せて買ったのはいいのですが、冷静な気持ちで改めて見つめてみると、かなり小さいビーズが多いことに気付きます。まあ、ビーズは仕方ないとしても直径3ミリにも満たないスパングルはどうしたものかと、暫し考え込んでしまいました。それから細い金糸を使ったチェーンステッチも無いとだめなんだろうかとか、とにかく現実を前に自分の気持ちがどんどん消極的な方向に向かってしまうのです。

 迷った末に、雑誌に出ていたクリスチャン・ディオールのアトリエを取材した記事のことを思い出しました。オートクチュールのドレスに施された、さまざまな技法。そのひとつは2センチほどの幅の生地の横糸を一本一本引いてフリンジ状のテープを作り、それを少しずつ重ねながらシルクオーガンジーに丹念に縫いとめていくというもの。羽毛のように細やかな糸の重なりはオーガンジーを通る光を受けて、生き物のようにきらきらふわふわと息づいています。

 唯一、手作業によってのみ生み出される美の貴さ、このような職人が今でも存在するというフランスの誇り、そしてこの手法でしか自分の理想とするものは表現できないと確信したデザイナーの自信と覚悟、一枚の写真を見つめ続ける中で、自分の迷いは消えてゆきました。

 自分が提案したものを、他の人が同じように再現できるかどうかということは、一番大切な問題ではないと気付いたのです。それより、私自身が最も美しいと思える表現を伝えること、そこから何かを感じとってもらうこと、願わくば、あの1枚の写真のように、見た人に深い思索をしてもらえるほどの豊かさを持ったものを作ることが自分の仕事、本当にやりたいことではないかと。

 作品を見て、作りたいと思いキットを購入して下さる方は、確かに一番のお客さまです!

 でも、その周りにもいろいろな形で私の作品に触れ、思いを馳せて下さっている方がいると信じて、これからも、おそらく迷いながら、でもまたこの気持ちを思い出して、自分がより美しいと思えるものを作り続けていける、そんな1年にしたいと思います。

キットについて

キット価格 18,000円(税抜)
サイズ 18×36×13センチ
キット内容 帯地2種、中厚コットン、羊革、接着キルト芯、薄手接着芯、モアレ、平ゴム、20センチファスナー、40センチファスナー、底板、底鋲、丸カン、ヴィンテージビーズ10種、スパングル5種、金糸、銀糸

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