展示会等でお受けしたご注文の商品を日々こつこつと作らせていただいていますが、この1年で一番多くのご注文をいただいたのが、長財布です。

　それも、お求めになった方のお財布をご覧になったお友達や、ご家族から頼まれて、と同じ方から2個、3個とご注文いただくことが少なくありません。

　そう言えば、私自身、日頃から自分の作ったものを何かしら身に付けていますが、一番注目を浴びるのがお財布なんです。特にお店の店員の方からはかなり高い確率で、声を掛けられます。それだけお財布というのは人の目を集め、実は人にとても見られているものだということを、つくづく知った、と友人に話したところ、「まあ、半分以上は眉唾モノで読んでね」との前置き付きで貸してくれたのが『長財布のヒミツ(副題は「どんどんお金が集まる！幸せな成功者が教えてくれた」です、嗚呼！)』という本。チャチャっと読み終えた感想としては、まあ、彼女の言うとおり、それって本当！？と言いたくなる個所も多々ありましたが、「お財布はお金のお家であり、そこをきれいで居心地よくしておくことが大切(お金が心地よい状態、つまり畳まれずにのびのびしていられるという意味で著者の方は長財布を推奨しています)」という考え方には、なるほどと肯きました。そしてそれからは貯め込んでいたレシートを毎朝整理することにし、殆んど使わないポイントカードも処分。そしてお財布を大事にするなら、バッグだってもっと大切にしてあげないと、という気持ちになり、それまでは、中身を入れたまた壁にかけていたバッグの中身を毎日トレイに移し、負担のかからない状態で休ませてあげることを今年のお正月から始めました。そしてそして、今では、アトリエの作業台の上も必ず何もない状態にしてから退出することを続けています。たとえ明日続きをやる仕事であっても、一旦片付ける。一見時間の無駄のように思えますが、朝、きれいな机に向かって1からスタートしたほうが、気持ちよく、効率よく仕事が進められるのです。

　ちょっと話がお財布から逸れてしまいましたが、こうして考えてみると、お財布をきっかけに、少しでも自分の生活が改善されたことは、やはりいい方向に向かっている？な～んて、この本を信じるほうにちょっと針が傾いたりして…。

　たまたまお財布が2種類出来たので、現在私はこれらを季節によって使い分けています。オリジナルプリント「ノスタルジア」のほうは春夏用として、そして今はフランスのベルベットリボンをコラージュした秋冬用を使用しています。でも、立春を過ぎた頃から、お財布も少し春らしいものにしたいな…と思い始め、実は兼ねてから使ってみたい素材があったものですから、ついに実行に移してしまいました。その素材とはこの花モチーフのレースです。グレイ×黒の色違いのものを何度か作品で使ったことがあるのですが、それを求めた時からこの紫っぽい紺×金茶のパターンがとても気になっていたのです。私の中で春の花といえば、菫、フリージャなど紫や黄色のイメージなので、レースに合わせる黄色の生地をいろいろ探したのですが、なかなかよいものがみつかりませんでした。一応1種類買って帰ったのですが、あまりピンとこなくて、もう一度アトリエのストックを眺めていたとき、この黄色の半幅帯が目にとまりました。もしかして、と思いレースを合わせてみると、グレイの縦縞がいいアクセントになってよく似合います。ただこれだけでは幅が足りないので、もう1種類生地を探さなくてはなりません。そうしたら、娘の買い物を待っている間、ちょっと覗いた手芸売り場で、この千鳥格子の生地を偶然見つけたんです。プリントではなく、織柄というところが他の素材に負けない存在感でぴったりです。

　ここまで材料が揃ったのですから、ビーズ刺繍の手を抜くわけにはいきません。お財布は出し入れの頻度が高いアイテムなので、通るものはビーズに2回糸を通してしっかりつけました。パープルの革のタッセルを加えると、ちょっとマダムな雰囲気？でも内側にはモダンなプリントを使って、若々しく！レシピもより使いやすく、作りやすいようにこれまでのものを少しアレンジしました。

　昔から春にお財布を新調するのは「春財布＝張る(お金で！)財布」ということで縁起がよいと言われています。さて、その効果のほどは…？