まだ、あかりが灯らないままの看板もある東京近郊の街中も、さまざまな光で彩られるような時節になりました。
いつもの騒がしすぎるイルミネーションや音楽には閉口、あまり嬉しいとも思わなかったのですが、今年のような控えめで静かな灯りには、ああ、と自然と喜びの声がこぼれ、何とか無事に年末が迎えられそうなことへの感謝の気持ちがこみ上げてきます。
そして、クリスマスがいつもより貴重なことのように思えて、今年はどこのケーキを買おうか、テーブルに飾るものを買ってみようかなどと、今から考えている自分に驚くのです。
さすがに天からのプレゼントはもらえないでしょうから、ここは私らしくクリスマスらしいバッグを作ってみようと思いました。
縁あってイギリスの古いカーテンをたくさん入手する機会があり、その中でも、今回使った葉っぱのプリントはお気に入りのひとつです。50年代を思わせる軽快なデザイン、色が随分褪せてしまって分かりにくいかと思いますが、葉っぱのまわりに白い小さな水玉が描かれています。私にはこれが雪のように見え、そうなってくると、葉っぱを縁取っている白はやはり雪で、眺めていると静寂の中シャンシャンシャンシャンと鈴を鳴らしながら駆けて来るトナカイの絵が浮かぶのです。
パーティとなれば大人たちは様々な装いで自らを飾ります。
繊細なレース、そこにほどこされたビーズやスパンコールの耀き、猫科の動物を思わせるような奥深いベロアの光沢、わくわくするようなチュールの波…バッグを作っている私の頭の中で、幼い頃のクリスマスへの憧憬がひとつひとつ思い起こされてきます。そして現実に戻る頃には、再び、静かな気持ちでその日を迎えられることが、いかに幸せであるかを思い起こし、まわりの人々に感謝をするとともに、何とか頑張ってこれた自分に、よかったね、と声をかける…。
どうぞ、みなさまの12月がよい締めくくりの月となりますように、そして来年はさらによい年となりますことを共に祈りたいですね。