今年は春の訪れが遅い、と言われていますが、今日はひさしぶりに気持ちのよい晴天に恵まれ、乾いた畑の土に、思いきり葉を広げたタンポポや、ホトケノザ、オオイヌフグリといった春の雑草の常連たちを見かけ、ほっとした気持ちになりました。
このバッグの製作に取り掛かった頃は、寒の戻りと言われる冷え込みと曇天が続いていて、気持ちもなかなか前に向けなかった。でも、何とか、このバッグから春を呼び込もう!と作る人が、持つ人が明るい気持ちになれるデザインを考えてみました。
作品をご覧いただき、「どういう風にして生地を選ぶんですか?」「生地合わせが難しくて…」というご質問を受けることが時々あります。
そこで、「今回のバッグの生地選びがいかになされたか」(そんな大袈裟なものではないです。ちょっと言ってみたかっただけ…)について綴ってみたいと思います。
まず、お気に入りの素材ありき、というところから始まる、ということは何度か書いたことがありますが今回はこのフランス製のレースがメインです。繊細なチュールレースに段染めのニットで刺繍がしてある、かわいい~って思わずにはいられないでしょう、これは。この上にビーズ刺繍をしてしまうと、このニットの立体感が損なわれてしまう、でもでも、何か飾りたいじゃない?ということで、その隙間の部分にスパングルをつけてみました。これは装飾のほか、チュールをベースの生地に固定させる役割もはたしています。
この時点で合わせる生地はまだ決まっていませんでした。ただ、何となくポップな感じのプリントと渋めの無地を合わせようかな、というふうに頭では描いており、そんな感じのものを探して生地屋にでかけました。
自分の希望通りの生地が見つかる確率はとても低いです。それでも、3回は店中を歩いて回ります。
そうしながら、もし、予定とは違っていても気になるものがあれば、それを使った組み合わせを、歩きながら考えてみます。今回は3回歩いても、心に留まるものに出会えなかったので、諦めて次の店に向かいました。
ここでも、期待していたようなものはすぐには見つかりません。ただ、最初に店内を見回した時に、今回使用したグレイに明るい水色のストライプのフランス製のプリントにピンと来ていたのです。
でも、生地が薄いし、インパクトが今ひとつ、と思って手には取らずまたお店の中をぐるぐる。頭の中もかなり活発に動き始め、最初の案の修正にかかっています。そして、もし、今回使わなくても、あのストライプは買っておこう、と考えることにしました。
そうすると、何となく気持ちが楽になり、一旦、今回の作品のことは忘れ、このストライプの生地に合うものを一つ買っておこう、と考えます。そこで選んだのが、ジャガード織りのインテリアファブリック。裏も使えるというなかなかの優れモノ。この二つの生地の上に一応持ってきたチュールレースを乗せてみます。この時点では正直これでいけそう、とはまだ思えませんでした。ただ、持ち手をこのチュールの中にある「赤」にしようと思っていたので、無地のコットンも買って帰りました。
さて、アトリエに戻って生地の裁断を始めます。どうかなぁ~、まだ自信がありません。
生地合わせのもうひとつのポイントは、それぞれの素材の分量です。自然の摂理に従って、「軽いものが上で重いものが下」が私の基本です。この場合、色、質感で考えるとプリントが上でジャガードが下。
そしてこれらを上手く融合させてくれるのが、ビーズなんですよね。小さいけど、効果は大きいです。
前面の3種類の生地を縫い合わせ、ビーズを付けた時点で、これで行ける!と確信しました。あとは自然とアイデアが湧いてきて、マチと口布を赤にした分、持ち手の表をジャガードにして全体のバランスを取りました。
いかがでしょう、参考になる点はあったでしょうか?とにかく、気に入った生地が見つかったら、買っておこう、くらいの余裕のある気持ちでいれば上手くいくような気がします。もし、すぐに使えなくても、別の機会にぴったりハマる可能性もありますし。購入の分量はバッグの深さの2倍ということで、迷ったら私はいつも60センチ単位で購入します。
こうしておくと殆んどのデザインのバッグに対応できます。柄の大きさも重要ですが、柄全体が出なくても、色で楽しむことができますから、やはり自分のインスピレーションを大切に。
今、お店には、新柄がたくさん入荷しています。あれこれ眺めながら、想像を巡らせるのも楽しいし、自分なりに今年の傾向などを分析してみるとファッションの参考になるかも。
今回のバッグはとても使いやすいデザインですので、是非、ご自分のコーディネートで2作目にも挑戦してみて下さい。
春を先導するくらいの気持ちで、今年は行きましょう!