8月の不安定な天候のせいでしょうか、覚悟のないまま9月を迎えてしまい、寂しいような焦るような気持ちがもやもやと体の中を渦巻いています。
思えば年明けから、世界同時不況、天災による各地の被害、政治の大きな変化など、先行きの不安を感じないではいられない出来事が続き、誰もが行く末を見守りながらじっと耐えているような重い空気をいたるところで感じます。
そんな中にあって、街や駅でふと目にする、上質の素材が放つ美しい色を纏った人に出会うと、何だかとても嬉しくなるのです。きれいな色を身につけることの楽しさは知っていましたが、見る人をもこんなにしあわせな気持ちにしてくれることに改めて気付き、テキスタイルのもつ大きなパワーに新たな感動を覚えずにはいられません。
それで自分でもそんな、見る人をもしあわせにしてしまうようなきれいな色のバッグを作ってみたくなりました。そして材料箱のテキスタイルを吟味しているうちに、そうだ、きれいなだけでなく「美味しそうな色」にしてみよう!と思いつきました。
ストロベリー、ラズベリー、マロン、ミルクキャラメル、ナッツ、そして白は新鮮なミルクでしょうか、こうして並べたてるだけでも口元が緩んできます。少し前からファッションにも『スイーツ』のブームがありますがヴィンテージテキスタイルは選ばれた糸と独特の工法で織られており、単色でも奥行と陰影を持っていますので、甘すぎて子供っぽくなることはありません。成熟した大人に相応しいマチュアーな甘さなのです。
ビーズは敢えて抑えめのトーンにして全体を引き締め、テキスタイルの陰影をより深められるようにしました。
形は2006年12月のバッグやこれまで展示会で発表してきたギャザーバッグに似ていますが、それらよりひと回りほど大きく、底マチもつきましたので容量はかなりふえています。
また上部にはパスカードをいれるポケット、下部には鍵などをいれるポケットがついていますので使い勝手もよくなりました。
ここまで来たら、と持ち手をつけるアクリルパーツは『ラ・ドログリー』のものを使うことに。お値段の話になりますが、このパーツ、1個600円!でも、このキャンディーカラーと艶やかさは外せません。
ご想像通り、製作にはかなりの時間がかかりますが、パーツが繋がるたびに楽しさも膨らみます。そしてどうぞ是非、無事完成させて、明るい光を9月の街に放って下さい。