初夏の頃、訪れた骨董市でこの縞の銘仙に出会いました。
かっこいな〜、と一目惚れ。ただ、問題はその時点で、すでに私の両手は重ねた帯や着物でいっぱいいっぱい、そう、お財布の中身も。
諦めようと思うのですが、なかなか振り切ることができません。
いいなあ〜、もし今日買わなかったら二度と出会えないのかも、ああーどうしよう。
おじさん、まけてくれないかな、いや無理だよね、だって私ったら、この着物のことをじっーと見て、持ったり置いたりして、欲しいっていうのが見え見えだもの。こいつは、この値段で買うぞ、って絶対思われてる。
そして、私は負けました、着物に?おじさんに?いや、自分に…。
かくして私のものとなったこの着物、持ち帰って、こんどはじっくり観賞。
銘仙の中でも特別薄い生地であることが判明。単仕立てなので、これではおそらく体の線がかなり出てしまうと、自分で着ることは断念。
薄いけど、状態はそんなに悪くないので、キットにしようかな、そうだ、これなら柄が繋がっているからいくつか取れそうだし。できればこの柄を生かした大きめのバッグにしたい。さて、どんなデザインがいいのだろう…迷った時は原点に戻る。そう、自分が今、欲しいと思っているバッグを作る。私が今欲しいのは、グラニーくらい収納力があるんだけど、お出かけのときにも持てるようなちょっとおしゃれなバッグ。ということで、こんなデザインになりました。
タイシルクのような鮮やかなグリーン(なんとこれも元は紬の着物です)との相性もよく、よそゆき風に仕上がりました。
このバッグの大きな魅力は軽さです。仕上がった時に、軽いなぁと思って、試しに秤に乗せてみたところ、何と200グラム!実はこの原稿を書くために、今朝もって行ったバッグの中身をこれに入れ替えて帰ってきたのですが、本当に楽でした。
使っている素材がどれも軽量なんです。となると、バッグの強度が心配と思われるかもしれませんが、それについては、ちょっと遊びのある工夫を施しました。
使っているうちに一番摩擦を受けると思われる底の四隅を補強するために底あて布をあらかじめキルティングしてから作り始めます。で、この布の色というのが意外な色なんです。長く使っているうちに銘仙が擦り切れてきたとしても、下からこの色が顔を覗かせます。その頃には作った人もあて布のことをすっかり忘れていて、ちょっとびっくりするのかもしれませんね。