夏の帰省の際、春から買いためておいた材料用の着物類をまとめて実家に送り、合間を見て、母とふたり縁側のそば広げた茣蓙に座り扇風機の生暖かい風を受けながら、それぞれのやりかたで解いていた。
段ボールから着物を取り出すごとに母のコメントがはいる。
「きれいやなぁ」「これいくらくらいするん?」
ん?なんぼやったかな…暑くて頭が回らないことや、身内の甘えもあって適当な返事をしたり、聞き流したり。それでもお構いなしにしゃべりつづける母。
「これ良い柄やねぇ」
え〜っ、どれ〜?、へぇー、それ、おかあさんもいいと思うんだ。よし、1票追加!
今回のメインとなる生地と出会ったのは、夏前の町田の骨董市。
筵の上に帯や着物が重なって出来上がったこんもりとしたお山からちらりと覗く色と柄が目に留った。
ターコイズブルー!幾何学模様!ああ、これを見過ごせようか、否!
布に手をかける。最初、洋服かと思ったが、引っ張ってみると着物の袖の形。
えっ、これ着物?これ着てた人がいるんだ…かなり、派手だよね、でも柄的には結構好きだな、なんて思いながら見つめること30秒、店主のおじさんの「柄、いいよね」の一言に背中を押され、ついに購入を決めた。プロの人もいいって言ってるからやっぱりいいのよ。これだけ分量があるからキットにいいかも。だけど、この柄本当に大丈夫かな、と最後まで不安をぬぐい切れないままだったが、母の一言によって「いい」に3票が集まったので、晴れてキットの材料として採用される運びとなった次第。
この形にすることは展示会の前くらいから決めていた。リクエストも多かったし。
そしてほかの材料を探すために訪れた原宿のアンティーク着物ショップで、このデッドストックのバックルに出会った瞬間、デザインの9割が決まった。
んー、何か70年代ぽくていいよね、だけど、あまりやり過ぎると持てる人が限られてしまうから、ほかの部分は色や質感を抑えめにして…よし、ほぼイメージ通りの仕上がりだ。
デザインと大きさは前回の小梅柄の横長バッグとほぼ同じだが、ところどころ改良済み。
あのバッグは夏の帰省の際、手荷物をいれたり、ちょっと出かけたりするときに本当に重宝したので、年末の帰省の時にも今回のバッグを使おうかと思っている。
ただ、ひとつ心配なのは、母の視線。夏の時も、しょっちゅう小梅のバッグを手にとって「使いやすそうね〜(同じものを作って欲しいという言葉が隠されている)」を繰り返していたから、今度見られたらストレートに「ちょうだい!(おんなじのが2個あるんだからという言葉が隠されている)」と言われないとも限らない。
さて、新作バッグ、無事帰還できるか?バッグの運命やいかに。
来年につづく。