ピーコックグリーンに赤い牡丹、2月の横浜アリーナのアンティークフェアーで見つけたこの帯地、まるで私のバッグになるためにここにやって来たみたい、というのは言いすぎでしょうか。
ただ、この華やかで重厚な帯地をそのまま使ってしまっては、コーディネートが難しいバッグになってしまいそうです。
そこでいい意味でのカジュアルさをプラスしたいと考えるわけですが、では、どんな方法で…?
まずは、かたち。このモチーフを生かすとなると縦長、そして少しデザインに工夫のあるショルダータイプ、ということでこれに決定。
次に組み合わせる色。すぐに思い浮かぶのは、こげ茶などの茶系統。でもそうしてしまうと、やはり大人し過ぎるし、季節的にももう少し明るいものにしてみたい。素材をストックしてある棚からあれこれ引っ張り出しましたが、なかなか決まりません。
改めてこの帯地の個性とパワーの強さを思い知らされました。そうして辿り着いた今回の茜色のインテリアファブリック、元々このバッグの裏地の候補のひとつとして購入していました。
表に持ってきても大丈夫?明るすぎない?軽すぎない?帯地に当てたり、外したりを繰返す中で、何でしょう、私の頭の中で化学変化が起こったのか、それとも単に目が慣れてきたのか、これいいんじゃない、という結論となり、晴れて表地に昇格。口側に持ってくる部分は面積が小さいのでこのままでもいいとして、底側は無地のままではやはり物足りない。動きを出したい時にプラスするストレートのハンドステッチを入れてみては?糸をコットンではなく金糸にすれば、カジュアルになり過ぎずにまとまりそう。モチーフにつけるビーズもひと工夫。少しボリュームを出すために、角ビーズや竹ビーズなどの大きめのものをごろっと付けていきます。色数は少なく、形や質感の異なるものを組み合わせて陰翳を出すと品良くまとめることが出来ます。
こうして何とか、華やかさとカジュアル感が融合したバッグの完成です。
もうお気づきかと思いますが、このバッグは『ビーズと古裂の小物』の表紙になっている作品の素材違いです。
今回改めて作るにあたって改良した点は、まずポケットです。このバッグはA4サイズもすっぽり入るのが魅力ですが、ただ大きいだけではバッグの中に入れたものがごちゃごちゃになってしまって、あまり使いやすいとは言えません。
そこで内側の底に近い部分に2つに分かれた大きめのポケットを付けました。ここにお財布やデジカメ、携帯などの細かいものを入れて、ポケットの付いていないほうのスペースに手帳やノートなどを入れればすっきりと納まります。
また、表布の後ろ面にもポケットを付けました。すぐに取り出したいものはこちらに。ファスナーが付いているので鍵もしまえます。
サンプルは右肩にかけて左手でこのポケットを開ける、という想定で付けていますので、左肩にバッグを掛けられる方はファスナーのつけ位置を反対にしたほうがよいかもしれません。
そしてもう一つ。脇から内側にかけての開き口にステッチを入れました。私自身はバッグの表側にミシンのステッチが出るのがあまり好きではないので、最初の作品では入れていないのですが、実際に使ってみた時、ここが留まっていないと、中にものを入れたときに表布が裏布にひっぱられて、バッグのフォルムが崩れてしまうことに気付きました。ビーズなどがついていてミシンがかけにくい状態でしたら、星止めでもいいと思いますので、この工程を追加することをお勧めします。
『ビーズと古裂の小物』のサブタイトルに「パリ風デザイン」という言葉がでてきますが、今回の作品はどちらかというと、珊瑚や荒削りな天然石を組み合わせた、イタリアンジュエリーの雰囲気に近いような気がします。
桜が終わったら、新緑の季節。瑞々しく輝く若葉に負けない鮮やかなグリーンのバッグを肩に颯爽と歩けば…見えます、ミラネーゼの横顔に。
※本革ベルトにはカンが取り付けてあります。
※帯地の柄行によりモチーフの花柄がサンプルと若干異なるものもございます。ご了承下さい。