先日スタッフの千晶嬢が阿佐ヶ谷の骨董市で見つけてきてくれたこの帯地に私は一目惚れしてしまいました。アンティークのグログランリボンのようなチャコールグレーのボーダーを挟んで緑青のような緑に金色で織りこまれた幾何学模様と桐の花、かっこいい!それに柄がリピートだからこれはマンスリーキットにしよう、と心に決めたまではよかったのですが、さてどのように使ったらいいのか暫し悩んでしまいました。美しい柄がシンメトリーに配されているという完成されたデザイン、もうそれを袋状にするだけで素敵なバッグになることはわかっているのですが、やはりそれだけでは纏まりすぎて楽しくない。でも変にさわったら本来の魅力までも壊してしまいそうだし。。。悩んだ挙句辿り着いたのは、もう少し気持ちが落ち着いてから考えてみるという結論、帯には暫くの間私のウエイティング籠(いつか作品に使おうと思っている素材が集められている籠です)の中でその時を待っていただくことになりました。そして何とか月末ぎりぎりにこのデザインを思いつくことができたのは、先日の京都散策で出会った紫の水玉ベルベットのお陰であります。
どこへ行っても必ず帰りには布を抱えて帰ってくる私、今回ももちろん例外ではありませんでした。面白そうなビルの外観に惹かれて入ったインテリアショップで気がつくとハギレを物色。袋を提げてお店を出るまではうきうきだったのですがホテルが近づくにつれ『一日目からこんなに荷物つくっちゃって。。。明日の骨董市の資金どうしょう、銀行探さないとなぁ。。。』とちょっとだけ後悔?いえいえそんなことはありません、何たって布は私の商売道具、他に何の贅沢をしているというのよ!と自分の行為を正当化させるためにそれ程の時間は掛からずにすみました。生地を買った時には意識していなかったつもりなのですが、帰ってからすぐにこの生地に先の帯地を合わせてみたことを思うと購入時から何となく帯のことが頭にあったのかもしれません。この2色では少し寂しいので棚に並んでいるリボンの中からからし色のスエード風のを選んで当ててみたらぴったり。お出かけバッグにしたいからちょっとリボンにタックをよせて華やかに、そうだマチにはあのベルベットみたいなエンボスの入ったイタリア製の生地を使おう、口布もアンティークのグログランリボンにしてあげよう、とそれからは意外にするするとデザインが固まり、無事締め切りまでにバッグを完成させることが出来ました。これだけの贅沢な素材を使いながら帯地の幅をフルに生かし、広めのマチもついていますので、幅広い層の方にいろいろなシーンで使っていただけるのではないかと思っています。口金はもうお馴染みの口布にバーを通すだけの簡単取り付けですので初めての方にもお勧めです。今回は特に質感に特徴のある素材が多いので、そこから生まれる不思議な布のハーモニーを楽しんでいただけたら嬉しく思います。