「バッグのデザインはどんなふうにして決めるのですか」という質問を時々受けます。
いろいろなケースがあるのですが、材料を見た瞬間にぴぴっとデザインが浮かぶことが私の場合は多いような気がします。今回のバッグもそんなふうにして生まれました。
まず最初に持ち手を発見。持ち手というのはバッグのデザインにおいてとても大きなウエイトを占めているので、気に入ったものが見つかった時は必ず購入することにしています。これを見つけたのはまだ肌寒い頃でしたが、細かく編みこまれた籐の感じが何ともシックで初夏になったら是非これでバッグを作ってみようと心に決めました。それからしばらくたって今回使用した着物地たちに出会い、デザインが決まりました。
このバッグには5種類の着物地が使われています。畝のような模様の銘仙、梅の小紋が柄違いで2種、縞の御召、幾何学模様の更紗。ほぼ同時期に集まってきたこれらの布は、種類は違うのにとても相性がよいのです。生地の分量とハンドルの形から放射状にパッチワークするデザインはほぼ固まったのですが、この着物地だけでは何だか少し寂しいのです。これらを上手く引き立てながら華やかさをプラスしてくれるものは。。。やっぱりシルクかな、と思い、手持ちのものを合わせてみたところ、とてもニュアンスの近い2色が見つかりました。後はビーズと刺繍糸。これも色を加えるというよりは着物地やシルクの艶やかさをさらに強調して輝かせるものということでパール、ゴールド、シルバーといった上品でナチュラルなカラーを選びました。そしてその形・種類にはバリエーションを持たせています。天然のパール、カットビーズ、長短の竹ビーズ・・・これらの組み合わせや付け方を列ごとに変えているので持ち方や見る角度によってバッグに添えられる輝きが変化します。とても静かに見えたり、眩しいほどにきらきらした表情を見せたり。とりわけ市松模様が裾に向かって広がっていくように施す中央のビーズ刺繍はこのバッグのチャームポイント。日々夏めいて来るこれからの季節にぴったりです。装飾性の高いバッグでありながらたっぷりとしたサイズなのも嬉しいところ。さまざまの素材の出会いから生まれた稀少なバッグ、ぜひコレクションに加えていただきたい1点です。