子宮頚癌の原因が最近になって子宮頸部にウイルスが感染することだと判りました。肺癌などであれば遺伝的なものがあって、それに喫煙するなどの環境因子が加わることで癌になってしまう確立が増えます。他に乳癌や大腸癌だって遺伝的なものの関与が大きくあります。
しかし、最近になって、ほとんど全ての子宮頚癌については遺伝的な関与はなくウイルスが原因と判ったのです。

このウイルスは性行為で移りますが、性病ではありません。子宮頚癌の検診の対象が20歳という若い女性からになったのも、性交年齢の若年化によります。性経験のある方なら、多くの方が一度は感染するのですが、風邪と同じ様にすぐに治る方もいれば、拗らせる方もいるように、このウイルスに感染しても通常は数カ月でウイルスは排除されるのですが、このウイルスが排除されずにいると子宮頸部が異形成と呼ばれる前癌状態になります。
そして、このウイルスがさらに3年や5年も排除されずにいると最終的に子宮頚癌になります。
逆に、子宮頸部の異形成と呼ばれる前癌状態になったとしても、途中でウイルスが排除されると正常な子宮の頸部に戻ります。

子宮頚癌の検診の目的は子宮頸部を異形成の段階でみつけることにあります。異形成をみつけたら、それが正常な方向に向かっていくのか、癌の方向に向かっていくのかを定期的に検査してみていきます。
ほとんどの方は正常な方向に向かっていき、治ってしまいます。しかし、癌の方向に向かっていくのであれば早い段階で子宮の入り口を焼くとか、子宮の入り口の表面を切り取るなどの方法で完治させることが可能です。もちろん妊娠も可能です。
逆に性経験のない女性はウイルスに感染していることはないはずですので、子宮頚癌の癌検診も基本的には受ける必要はありません。

ウイルスが原因と判ると、次に研究者が考えついたのが子宮頚癌に対するワクチンの開発です。そして最近、子宮頚癌のワクチンが開発され、既に予防接種が開始されています。
このウイルスはパピローマウイルスと呼ばれるものですが、パピローマウイルスには何種類もある為、現在、全てのパピローマウイルスの種類に対してのワクチンの生産は技術的およびコストの面から不可能であり、子宮頚癌の60%の原因となっている2種類のパピローマウイルスに対するワクチンが主なものとなっています。
将来的には4種類、5種類と増えていくでしょうが、現時点では全てのパピローマウイルスを網羅したワクチンではありませんので、もちろん、予防接種を受けたからといっても、子宮頚癌の検診は必要です。
しかし、この予防接種を受けることにより、子宮頚癌の患者さんが70%も減少する効果があると想定されています。

しかし、子宮頚癌の原因がウイルスで、ウイルスが少なくとも3年以上も子宮の頸部に感染を持続すると子宮頚癌となるのですから、子宮頚癌の予防接種の有無に関わらず、毎年、子宮癌検診を受けることで、子宮頚癌で命を落とす確立は、どちらにしてもゼロとなるはずです。


三浦産婦人科
三浦 成陽