肛門の病気、いわゆる痔にはいろんな種類があります。また重症度も様々です。軽い場合は薬局等で相談して軟膏などを使用し、治ればそれでいいかもしれません。
しかし、場合によっては人工肛門の手術が必要となるなどの重篤な病気もあり、治りが悪いのに自己流の治療をいつまでも続けるのは要注意です。とくに40歳以上の方で出血が続く場合などは、やはり大腸がんではないことの確認が必要ですので、肛門科を標榜している医療機関を受診して、適切な診断と治療を受けてください。

肛門科ってどんなとこ?何をされるの?

肛門科を受診したほうがいいのはわかっていても敷居が高く、なかなか機会を逃している方も多いかと思います。だいいち恥ずかしいし、何をされるのか不安です。そこでまず肛門科での診察の流れについて説明いたします。けっして特別なところではないのです。
 
どの診療科も同じですが、やはり肛門科の場合もまず問診といって患者さんの症状について詳しく聞かせていただきます。場合によっては症状をお聞きするだけでどういう病気か推測できるからです。
 
肛門科の場合、とくにプライバシーには十分配慮して専門的な知識を備えたスタッフがまず聴取いたしますので、受付で「お尻が痛くて来ました・・・」とか「便に血が混じっていました・・・」などと簡単に告げれば、あとは他の患者さんには聞こえないようなところで問診を進めてくれると思います。
 
診察室に入りますと医師が追加の問診をします。そして診察台に休んでいただき、まず腹部の触診から始まります。その後、そのまま横向きになりカーテンが閉められ、そのなかで下着を膝まで下ろして、お尻にはバスタオルなどをかけて肛門の診察が始まります。
 
まず指診といって、ゴム手袋をつけ局所麻酔薬が入ったゼリーを塗った指で調べます。その後、肛門鏡という親指ほどの太さの金属製の筒状の器具を肛門から挿入して内部を観察します。けっして痛いことはありませんので、心配はいりません。
 
あとは説明を受けて、処方箋をもらって薬局に行くだけです。いつまでも一人で悩まず、気軽な気持ちで肛門科を受診してください。

肛門の病気の種類

肛門の代表的な疾患といえば、痔核、裂肛、痔瘻があげられます。いわゆるイボ痔、キレ痔、アナ痔です。図をみていただければお分かりのとおり、痔核(イボ痔)は肛門の中のほうにできる内痔核と入口付近にできる外痔核に分かれますが、内外連らなっていることもかなりみられます。
 
いずれも軟膏や坐薬などを使用することで軽快しますが、内痔核の場合、最近はジオン注による硬化療法が注目されています。従来の手術のように切って治すのではなく、イボ痔に確実に薬を注射することで手術と同等の効果を期待することができ、しかも術後の痛みが軽く、日帰りや2-3日の入院ですませることも可能になってきました。
外痔核で多いのは血栓性外痔核といって肛門の入口に大きな血マメができた状態です。ある日突然お尻が腫れて痛くてたまらない、というのはほぼこの状態です。これも安静や入浴、軟膏の塗布で軽快することが多いのですが、場合によっては局所麻酔で少し切開して、血栓をだしてやったほうが治りが早いこともあります。
 
裂肛(キレ痔)については一般の方もご存知だと思いますが、固い便などが原因で肛門の入口に傷がつき、痛みと出血をひきおこします。慢性化すると難治性になることもあり、早めに適切な治療を受けることが大事です。
 
痔瘻(アナ痔)ということばはあまり聞きなれないと思いますが、初発の症状は肛門周囲膿瘍という状態です。肛門に軽い痛みを感じだし、数日のうちに腫れてきて椅子にも座れなくなります。局所麻酔で切開して膿(ノウ=ウミのことです)を出してやれば劇的に痛みから解放されます。この肛門周囲膿瘍をくりかえして慢性化した状態が痔瘻といえます。

以上のほか肛門の病気では、排便時に痔がでてくる、お尻が痒い、何もできてないのに肛門の奥が夜中に痛い、など様々な症状が現れます。紙面の都合上、詳しくは省略させていただきますが、案ずるより生むが易し。まずは肛門科にいきましょう。

しらいし胃腸クリニック
白石 円樹