感染性胃腸炎の原因として、細菌、ウイルス、寄生虫などさまざまなものがありますが、その中でもウイルスによるものは頻度が高く、その代表格にノロウイルスがあります。
本邦での食中毒の原因としてノロウイルスが最も多く、半数近くを占めます

ノロウイルス感染の症状について

「胃腸にくる風邪」として表現されることもあります。ノロウイルスに感染すると24時間~48時間ぐらいで発症します。食事が原因だったとしても、症状が出てくる直前の食事のせいではなく、前日もしくは前々日の食事が原因だったりします。

それほど熱は出ませんが、吐き気や嘔吐、腹痛、下痢などの症状があり、これらの強い症状が1~2日ほど出て、徐々に回復してきます。人によっては、感染しても症状の出ないことや軽い症状の場合があります。

ただ、症状が強い場合や、小児や高齢者など体力が弱い方の場合は、脱水症状になったり、さらに体力を消耗して大変危険ですので酷い場合は病院にかかるようにしましょう。
また症状が治まっても、3日~7日間ぐらいは便にウイルスが含まれていることもありますので、感染の拡大に気をつけましょう。

ノロウイルスの治療について

ノロウイルスに有効な薬はありませんし、ワクチンも存在しません。対症療法といって、吐き気を抑える薬や、胃腸を整える薬などの飲み薬や、脱水症状に伴う点滴などで症状を緩和します。ほとんどの吐き気止めは食前の投与になると思いますので、食事が摂れない状態でも服用できます。下痢止めも処方されることがあるかもしれませんが、感染初期の段階ではウイルスを排泄させた方が良いとの考えから使用しないことがあります。

ノロウイルス感染症の感染経路について

■ 飲食物からの感染
ウイルスを溜め込んだ食材、よく言われるのはカキやアサリ、シジミなどの二枚貝などですがこれらを食べることや、ウイルスが表面に付着していたり、食器についていたりする食品を食べること、また井戸水などがウイルスで汚染され、その水を飲むことで経口感染することが考えられています。

■ 人から人への伝染
飲食物によって感染した患者、あるいはさらにその患者から感染した患者のノロウイルスが大量に含まれる糞便や吐物から人の手などを介して二次感染する場合です。
具体的には嘔吐した子供の吐物の後片付けをしたり、不十分な手洗いのまま調理した食べ物を食べたりすることにより感染します。ノロウイルスは口から入ってきて、食道、胃を通って、小腸の壁で感染、増殖をします。そして増殖してどんどん多くなったウイルスが腸の中で便と混じっていくわけです。

その結果、ウイルスは感染者の糞便と共に排出されるほか、嘔吐がある場合は胃にわずかに逆流した腸液とともに嘔吐物にも混じって、排出されます。そうして出てきた糞便や 嘔吐物の一部は目に見えないような少量ですが、広範囲に飛び散ります。
また手洗いを十分にしないと、ウイルスは手の指の間などにしぶとく残っています。知らず知らずのうちに、衣服や食器など、さまざまな経路で広がったウイルスが、ごくわずかに混入した食品などを介して再び経口的に感染して広がっていくのです。

一般には飲食物からの感染よりも、人から人への感染のほうが数は多いといわれています。

ノロウイルスの予防について

■ 手洗い
現在のところ有効な消毒薬はなく、石けんでの手洗いが基本です。

■ 食品の加熱や調理器具の消毒
ノロウイルスによる食中毒を起こす可能性があるものとして、二枚貝(牡蠣や大アサリ、シジミ、ハマグリなど)が有名ですが、それ以外の食品からの感染も報告されています。食品の加熱による予防について効果的な加熱時間と温度は、まだ確立されていないようです。ただ、厚生労働省から発表されているQ&Aには85度で一分間以上の加熱をすればウイルスの感染性はなくなるとされています。

また、消毒薬では次亜塩素酸ナトリウムが有効です。まな板、包丁、食器などの調理器具は、洗剤などを使用し十分に洗浄した後、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm以上で5~10分間以上)で浸すように拭くことでウイルスを失活化できます。

■ 便や嘔吐物の処理
処理には使い捨てのマスクや手袋を使いウイルスが飛び散ることも考えて、便や吐物をペーパータオルで拭き取ります。拭き取った後は、次亜塩素酸ナトリウム(塩素濃度200ppm)で床を拭き取ります。この処理に使った雑巾類は、ビニール袋に入れて密閉して捨てるようにしましょう。袋に一緒に次亜塩素酸ナトリウムを汚染物が浸るぐらい入れることが望ましいです。次亜塩素酸ナトリウムは、薬局やインターネットで売っています。

成田内科医院
成田 裕介