それではこのような改正会社更生法の施行で、ゴルフ場業界にどんな影響が出てくると見られているのか。多くのゴルフ場案件を抱える地方銀行の法務担当者の予測はこうだ。「法律上は民事再生法より会社更生法が優先する。
裁判所の手続きが簡便になり、債権者にとって使い勝手がよくなるため、民事再生法に駆け込むゴルフ場経営者に対して、債権者側が会社更生法で対抗するケースが考えられる。
経営権を維持したまま、債務を大幅カット出来る民事再生法と違い、会社更生法では経営者は事業から撤退を強いられ、管財人の厳しい責任追及にさらされる。これまでのように安易に民事再生法に逃げ込むことが出来なくなった」。
この法務担当者の言葉通りの展開になったのが、4月7日、大口債権者の整理回収機構(RCC)から会社更生法を申し立てられたタナカインターナショナル(本社・山口県小郡町)のケースだ。
同社は山口G&CC長門豊田湖G場(山口県)など3コースを所有するほか、関連会社を通じてサーキット場なども経営していたが、新たなゴルフ場開発やF1レースの開催に失敗するなどして経営難に陥った。2000年7月に特定調停法を申請し、RCCとの間で債務返済の話し合いを続けていたが決裂。
このためタナカインターナショナル側は3月31日、経営権を守るために東京地裁に民事再生法の適用を申請した。当初、同地裁は申請を受理して保全命令を出したが、RCCはこれを許さず会社更生法で対抗。結局、同地裁は会社更生法を優先させ、民事再生法は棄却されてしまったのだ。
これがRCCの改正会社更生法適用の第一号となった。RCC広報室では、「タナカインターナショナルの経営体制や透明性などに疑問があり、経営者が生き残る民事再生法手続ではモラルハザード(倫理の欠如)の防止や、公平透明な手続きの進行は困難と判断した。
会社更生法の改正ポイントの趣旨を最大限に活用し、同社グループの事業価値を最大限活かす方法で会員のプレー権を保護しつつ、早期の経営再建をはかりたい」と、話している。
数多くのゴルフ場案件を抱えるRCCだが、関係者によると、経営者がゴルフ場の売却に抵抗したり、権利関係が複雑で売却が困難になっている案件が少なくないと言う。全国紙の経済部記者が解説する。
「そもそも会社更生法を改正した最大の狙いは、国際公約となっている金融機関の不良債権処理を加速させること。日本で唯一の公的サービサー(債権管理回収業者)でもあるRCCが、業務遂行のために今後、この法律を最大限活用するのは間違いありません。」
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