支援する会会報<第11号> 2002年9月5日 |
------------------------------------------------------------------------------------ 大泉さん夫妻、JCOを提訴 |
事故後入退院を繰り返す大泉夫妻 大泉さんたちはJCOの事故現場である転換試験棟から道路一つ隔てたすぐ近くに自動車部品製造の工場を持ち、事故当日も何が起こったのかも知らないまま働き続けていた。たまたま近くを通りかかった村役場の職員らしき人に聞くまで実に5時間以上にわたって中性子線を浴びせられ続けた。大泉昭一さんは事故後、持病の皮膚障害が激しくなり、入退院を繰り返している。妻の恵子さんは、事故の晩から激しい下痢が続き、口内炎もできた。JCOの建物を見ると体がこわばり仕事をすることもできず、胃潰瘍になり入院、今年に入ってPTSD(心的外傷後ストレス障害)の診断を受けた。 働くこともままならず、大泉さんの工場は操業停止に追い込まれた。 |
「診断書を持ってこい!」「PTSDではダメだ」 健康被害を一切認めないJCO 臨界事故被害者の会はこれまでJCOとねばり強く交渉してきた。JCOは風評被害等経済的な損失には一定程度応じるが、健康被害については全く応じてこなかった。「診断書を持ってこい」と。ところが、恵子さんがPTSDの診断書を持っていくと、今度は「PTSDではダメだ」である。事故を起こし、多くの住民を被曝させておきながらこの態度である。このため交渉は決裂し、大泉さんたちは裁判に訴えることを決断された。 |
国の被曝評価は過小評価 中性子線被曝の大きさを正当に評価し直せ! JCOが健康被害を認めないのは、国が被曝を大きく過小評価し、被害を認めていないことが後ろ盾になっている。国(旧科技庁)は、大泉さんたちの被曝線量を6.5ミリシーベルトと推定した。しかし、私たちの調査では、昭一さんで43.6ミリシーベルト、恵子さんで39.0ミリシーベルトである。この違いは国が行った線量評価のやり方にいくつもの問題があるためである。ここでは一つだけ例を挙げよう。 中性子線被曝はガンマ線の被曝に比べて遙かに大きなダメージを受ける。そしてこの中性子が9割を占めたのが臨界事故の特徴である。旧科技庁は中性子のガンマ線に比べての危険性を10倍にしかしなかった。しかし、国際放射線防護委員会(ICRP)は1985年に中性子線の線質係数を2倍、すなわち20にするよう勧告している(パリ声明)。これさえも旧科技庁は守らなかった。さらに中性子線の危険が本当はもっと大きいことを最近の研究は示している。このことはJCO事故後に国が設置した原子力安全委員会・健康管理委員会の主査代理を務めた佐々木正夫氏でさえ自らの研究の中で認めているのである。 |
裁判を支援し、健康被害を認めさせよう この裁判は二人だけの裁判ではない。JCOを訴えたくとも様々な事情で原告になれない多くの住民を代表する代表訴訟の性格を持っている。まもなく事故から3年がたとうとしている。この3年間の苦しみが裁判の中で訴えられる。 私たちは何回も東海村に足を運び、健康実態調査を行ってきた。多くの住民が健康被害や様々な不安を訴えるのをじかに聞いてきた。被害を覆い隠し、被害者を切り捨てようとするJCOや国を許さず、裁判を最大限支援していこう。 |
訴状(原告の御厚意で掲載させていただきます) |
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