支援する会会報<第10号>   2001年10月5日

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 =東海現地調査報告書=

深刻な健康・被曝被害の実態が明らかに!

国は住民の健康補償を行え!
 
 昨年7月から行ってきた、JCO臨界事故被曝健康調査の報告書が、事故2周年を前にまとまりました。その結果は、健康実態も被曝量も、私たちの想像を超える深刻なものでした。直接作業に携わったJCOの3人の作業員以外には、事故による放射線被害は一切ないとする、科技庁の公式見解を、真っ向からくつがえす結果がでました。
 この報告書が、被害者に対する健康手帳の交付や長期的な健康診断、専門的な医療機関設置など、被害者の方々が求めている要求を、国・文部科学省に受け入れさせるための材料として活用されれば幸いです。また一人でも多くの皆さんがこの報告書を通じて、事故の深刻な被害の一端を知っていただくことができればと思います。
 以下に、調査結果を、かいつまんで報告します。


健康実態の調査結果

1.深刻な健康被害の実態

ある被害者(20歳代)の訴え


 事故直後に吐き気、下痢、頭痛、全身倦怠、脱力感、めまい、のど痛、リンパ腺の腫れ、黒色便、食欲減退、口内炎、白髪増加等の症状が出ています。元気だったのに、事故後少し動き回っただけで疲れてぐったりする状態になり、体重も51sから47sに落ちました。特にリンパ腺の腫れが気になり、内科と歯科に行きましたが、原因もわからず、いらいらがつのっています。しかも10ヶ月後もそれらの症状が続いた上に、息切れ、むくみ、風邪が治りにくい、怒りっぽくなった、熟睡出来ない等の症状が新たに出てきています。
 事故後、会社を休みがちになり、収入も安定せず、家を建てることもできません。子どもたちが事故によるいじめを苦にして自殺をしないかと不安です。もう一人子どもをつくろうと計画していましたが、不安で迷っています。一生、家族の身体や生活のことで、これらを背負って行かなければならないことに強い不安を感じます。

2.事故後1カ月以内の症状について


 3割以上の人が、事故後1ヶ月以内に何らかの自覚症状を訴え、そのほとんどの人が2つ以上の症状を訴えています。全身倦怠・疲れやすいと訴える人がもっとも多く、続いて、のどの痛み、脱力感、頭痛、下痢、食欲不振の順になっています。(図1)
 また、被曝線量が高くなればなるほど、自覚症状を訴える人の比率が高くなっています。1ミリシーベルト未満は26%、1〜10ミリシーベルトは36%、10ミリシーベルト以上の場合は50%と半数の人が何らかの症状を訴える結果が出ています。

3.現在の自覚症状

 調査した時点で何らかの身体の不調を訴えた人は、実に半数近く存在することが明らかになりました。症状別にみてみると、「風邪を引きやすくなった」が最も多く、次いで咳・痰、「体がだるい」、眼精疲労、肩こり・首の痛み、頭痛、イライラの順になっています。免疫機能の低下によって抵抗力が落ちた時に生じる症状が相対的に多い点に注意する必要があるでしょう。
 現在の自覚症状(事故前からのものは除く)についても、事故1ヶ月以内の症状と同様、被曝線量が高いほど多くの人が症状を訴えています。ここでも被曝線量との相関関係が示唆されます。また現在の自覚症状の特徴は、被曝線量1ミリシーベルト未満及び1から10ミリシーベルトの場合でも、症状を訴える人の割合が高いことです。




被曝線量の調査結果

4.深刻な放射線被曝の実態

 今回の調査では、215人の人たちから事故発生以降の行動を詳しく聞き取りし、それに基づいて被曝線量の評価を行ないました。今回の被曝線量評価の結果、次のような深刻な被曝の実態が浮かび上がりました。

 1. 最高は181ミリシーベルト。150から200ミリシーベルトという高い線量の方は2人です。放射線の人体に与える影響を著しく過小評価する、国際放射線防護委員会(ICRP)の見解でさえ、急性的な影響が問題になるほどの高い線量です。原発重大事故などの事故処理にたずさわる、作業者の緊急時の線量限度とされる100ミリシーベルト前後の高い被曝線量の方も2人います。

 2. 「一般人の年間線量限度」1ミリシーベルトを超える人は3割近い62人にも達します。そのうち22人は、10ミリシーベルトを超え、法定の10倍以上の線量をあびています。

5.科技庁は6分の1以下に過小評価

 今回の調査を受けた人のうち、35人の方は科技庁が実施した調査による被曝線量を通知されています。今回の調査での私たちの評価方式による被曝線量(A)と、科技庁が通知した被曝線量(B)を比べてみると、いかに科技庁が被曝を過小評価しているかがわかります。35人全体の被曝線量で見ると、約6.4倍になります。科技庁の調査では、6分の1以下に過小評価していることになります。




9・30東海臨界事故2周年集会レポート
東と西でJCO臨界事故を問う集会が開催される!
 東海村からすぐ近い水戸で、「なにも解決なんかしていない!JCO臨界事故2周年を問う全国集会」が行われました。この集会に、阪南の調査結果を報告してほしいとの依頼があり、「支援する会」を代表して、私(J)がはせ参じました。 集会には、何と800名以上の労働者、市民が参加し、大阪から用意していった資料が足りないほどでした。これだけの人々が、臨界事故の問題で日曜日の昼間に結集したことは、うれしい誤算でした。
 当然、報告にも力が入るというもので、予定の20分を超過してしまいました。丁度、亡くなられた大内さんの「被曝治療83日間の記録」を、制作されたNHKプロデューサーの講演後ということもあり、3人の作業員以外にも健康被害がでていることを強調しました。そして、東海村を始め、地元の方々の協力のおかげでこの調査が成功したこと、一人でも多くのみなさんに、報告書を読んでもらい、事故を風化させない取り組みを行ってほしいことをお願いして、現地調査の報告を締めくくりました。集会後のデモにも参加し、みなさんとともに、事故被害者への補償を訴えました。
 一方大阪では、「JCO臨界事故から2年 原発とめよう! 市民のつどい」が、市民団体の共催で行われました。東海村から、「臨界事故被害者の会」の谷田部裕子さんが、来てくださいました。谷田部さんは事故当日、子供の学校に電話をかけたが、かからなかったこと、夕刻に返された子供がちょうど降り出した雨に濡れて帰ってきたこと等を話されました。そして事故後の国の説明会では、こちらから聞かなければ都合の悪いことはしゃべらないことが身にしみてわかったと言われました。
 もう一人の講演者は、新潟県刈羽村の住民投票で勝利を収めた小木曽茂子さんでした。推進派が「あのリーフレットに負けた」と言った漫画のリーフレットを作れた喜びを話し、その最後 に載せた谷田部さんの言葉、「事故から子供たちを守れるのは専門家でなく、私たちしかいない」というのが多くの女性たちを立ち上がらせたと紹介されました。東海村の事故が、刈羽の勝利に結びついたのです。私たち調査委員会も、特別に時間をいただき調査の報告をしました。 
(J&Y)
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