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熊撃ちのさかまく荼毘の煙かな (青森県)草野 力丸 |
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作者は青森県深浦に住む。町の役場に勤務していた時代に、「白神山俳句大会」を立ち上げ、大勢の選者を組織し、全国からの投句作品をまとめて退職後、独力で『白神山俳句歳時記』を編集、刊行した。選者のひとりであった私は、未知のこの人からいろいろと相談を受けることがあった。ある日「製作費用は行政からほとんど出ない。自分の資金で進めている」と。「刊行の見通しはあるのですか」とたずねた。「自分の退職金がまだ少しある。その金が底をつくまでは頑張れますよ。女房も了解してますから」。電話を切って私はその晩眠れなかった。気がつくと、この人は「藍生」に入会されていた。長い俳歴のある気骨の作家である。 |
湖国ゆく旅や風にも日焼して (茨城県)川崎 柊花
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柊花さんの作品は安心して読める。すべての作品がこの人の実際の行動に裏づけられているからである。この人はよく歩く。四国、坂東、そして秩父。「藍生」のロングランの吟行鍛錬会にも遠く大洗海岸のほとりから参加されているし、単独でも巡礼行を重ねている。お世辞抜きにこの人は年々若返ってゆく。少女時代から俳句を作っていたというが、近ごろの作品にはこの人ならではの個性の輝きが加わってきていることをよろこぶ。 |
薫風にあたりすぎたる空腹感 (新潟県)小田 すみれ
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いかにも若い母親、そして職業は教師という忙しい充実した毎日を送っている女性の句である。小田すみれ健在を印象づける句だ。 |
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