リボン、その小さくも完成されたテキスタイルの中に息づく密度の高い美しさは、世界中、どれほどの女性の心を奪い続けてきたのでしょう。昨今は技術の発達によって発色やテクスチャーのバリエーションもぐんと広がり、ショップやショールームの壁一面に並んでいる風景は圧巻。どれもが素敵で、どれかを選ぶことが出来ない、その困惑と幸福感が入り混じった気持ちを思い出しながら、少し陽気の良くなった街のリボンの店を何件か尋ね、心に響いたものをカットしてもらうときの緊張感は、何年経っても変わることはありません。
新しく手に入れたものと、長年大切に仕舞っておいたものをテーブルに並べてそれぞれの美しさが引き出せる配色、配列を考えます。さながら今回のポーチは画家のパレットのような形なので、リボンが絵の具のようにも見えてきます。小さくなっても、そのものの持つパワーは変えたくない、というのが私の小物作りのコンセプトなので、かなりの要素を詰め込んでしまうのですが、今回は一分の隙もないような濃い色でまとめてみました。
これからは風が強く、陽射しも眩しくなる季節なので、それに合わせて眼鏡が入る形にしてありますが、用途は使われる方がご自由に決めてくださって構いません。後ろ面にはポケットがついていますので、ペンケースにしてもいいかも。
表に大きく出るバッグと違って、小物には持つ人のよりパーソナルな嗜好やプロフィールが感じられることが多いような気がします。親しい間柄の人しか目にすることの出来ない、もしくは誰にも見せない自分だけの世界がひっそりと、かつ、無二の存在感を放ちながら息づいています。
今年は私も小物をいくつか新調したいと思っています。そのことが未知の自分を発見するきっかけになったり、新しい出会いのコミュニケーショングッズとして役立ってくれることを期待しながら。