公私ともに忙しかった今年の3月と4月、気がつけば桜は咲き、そして瞬く間に風に舞う花吹雪と姿を変え、慌ただしく私の目の前から去っていってしまいました。
でも、考えてみれば花は桜のみにあらず。1月の水仙に始まり、梅、沈丁花、フリージア…先日は早くも花屋の店先で芍薬を見かけ、帰り道には、古いアパートの小さな庭に群れ咲くスズランにほっと心を和ませてもらったのでした。
今は花の色や形のバリエーションが増え、花屋を覗くたびに驚き、感心させられるのですがそんな流れにあっても、「白い花」というのは特別の魅力と存在感を放ち続けているように思うのです。
色がない分、その花のフォルムが強調され、造形の素晴らしさに見とれていると時を忘れます。
そして、「白」にはどんな珍しい色にもかなわない輝きと清らかさがあり、その香りさえも他より貴く感じられるのです。
そんな白い花のイメージをもった、できればその香りも受け継ぐことが出来るようなバッグを作ることが今回の目標でした。
中心材料となるヴィンテージのレースは数年前に手に入れ、キット用に保管し続けたものです。
この繊細な素材を生かすことができるヴィンテージビーズとの出会いがあって、ようやく着手できる時が来ました。
バッグの形は少し前に思いついてデザインを書きとめたメモを参考に決めました。いつもは時間に余裕がないこともあって、すぐに実際の素材に手を出してしまうのですが、今回はまず紙で形を作り、そのあと布で作って修正し、型紙も何度か修正を加えて(途中その型紙をなくしてしまうというハプニングも…)ようやくこの形に辿り着きました。
オールシーズン使えるというのも大きな魅力ですが、夏はやはり夏だけしか楽しめない素材を身に纏って、季節感を堪能してみたいものです。
持ち手は2種類。ハンドバッグタイプの時はフェミニンな帽子や洋服に合わせて、ショルダーベルトをつければ、ジーンズなどのカジュアルな装いをグレードアップするのに一役買ってくれること間違いありません。
初夏の訪れを待つこの時期には、朝露のようにしっとりと見えるビーズたちが、まぶしい光の下で煌めく季節まであと数か月、思い切りおしゃれを楽しむことで苦手な夏を乗り切るのも、ひとつの知恵かもしれません。