今月のキット、とにかく贅沢のひとことに尽きます。材料の種類の多さについては、語り始めるときりがなくなりそうなので、キット内容をご覧いただきながら写真と見比べてみてください。その中でひとつだけ説明させていただきたいのは帯地です。おそらくこれまでのマンスリーキットの中で最も古い素材。正確な時代はわからないのですが、『ビーズと古裂の小物』という作品集の中に掲載されている「ワイドな六角形のバッグ」に使われている帯とよく似ているので同時代のものかと思われます。この帯は購入先の骨董市のおじさんに「これは相当古いよ、江戸まで遡れるかもね」ということを言われた覚えがあるので今回のものも江戸時代はちょっとわかりませんが、100年は経っているのではないかという貫禄を感じます。貫禄というと聞こえがいいのですが、殆どの色が退色してしまっていて表面の糸もふとしたことで切れてしまう脆さ、だだそのおかげでモチーフの輪郭がはっきりと際立ち、モダンなオーバルの枠のから溢れ出しそうな輝きを今も放っています。
古裂をビーズや刺繍糸で装飾する時、もとの素材の持ち味を大切にすることを第一に考えたいと思っています。色あせた刺繍の僅かに残っている端のほうの色や織り込まれた裏側の糸から元の色を推測してビーズを選んでいきます。そしてただなぞるのではなく、新しい色を差したりカットビーズやスパングルの輝きをプラスすることで古い着物は独特の美しさをおび、そしてどんな素材とも調和できる奥の深い魅力をもったテキスタイルに生まれ変わります。
今回はバッグのフォルムを出来るだけ安定させるため開き口にファスナーを使用しております。一度別布に取り付けたファスナーを本体に縫い付けるいう比較的縫いやすい方法を取っていますが、どうしてもファスナーは。。。と言う方はまあ、付けなくても基本的デザインに支障はありません。そして細かい刺繍と生地合わせについては、これまでご購入いただいた皆さまはご存知かと思いますが、キットには全て実物大のカラーコピーがついていますので(今回はさらにわかりやすい材料指示も付いています)、それとレシピを見ながら取り組んでいただければ大丈夫かと思います。1月はマンスリーキットがお休みとなっていますので、お正月休みなどを利用してじっくりと作って下さい。
最後になってしまいましたが、バッグのネーミング通り、チェーンが1重、2重と掛け替えられるようになっていてショルダーバッグとしてもハンドバッグとしてもお使いいただけるようになっています。そしてよく見てください、両面ともとても華やかで個性的なデザイン、これはもしかしたら4wayで楽しんでいただけるバッグなのかもしれません。