今年は暖冬、と言われている年ほど都心あたりでも突然雪が降ったりするような気がします。そんな寒い日が時々あるとは言え、頭の中は雪の下から少し頭を覗かせているチューリップの芽のように訪れる春のことをもう考え始めています。春らしいバッグを作りたくなりました。
以前から大切にしていた、織り方と柄の感じがちょっと珍しい帯地を使って普段使いできる大きさのバッグを作ろうと決めました。
4種類の帯地を組み合わせてつないだあとアンティークのブレード2種類を重ねてみたところ、程よい厚みとヨーロッパテイストが加わって自分が思い描いたとおりの雰囲気が生まれました。と、ここまではよかったのですが後ろ面の生地を何にするかでかなり悩んでしまいました。前面と同じでは体に触れた時の摩擦が気になるし、生地を変えたほうが楽しさが増すので是非そうしたいのですが、お気に入りのお店を探してもなかなかそういった生地に出会えません。諦めてアトリエに戻りあれこれ当ててみるのですが何かしっくりこない。
もしかしたら、と自宅にもどり、いまや生地を始めとするさまざまな材料のストック場所と化してしまっているアンティークのワードローブの中を探したら見つかりました、少し光沢のある落ち着いたライラックピンクのヴィクトリアン風のテキスタイル!そうそう、こんな生地を探していたのよ、と早速裁断して前面と縫い合わせて見ます。きれい。。。そうね、こんなバッグにはやっぱりビーズフリンジよね、縫い合わせ目に繊細なフリンジを付けてあらかじめ決めていた本革の持ち手を合わせてみたところで、あれ、何か違う。。。持ち手に対して何となく華奢すぎるみたい、と一旦外してビーズの大きさを変えてみたりフリンジの長さを変えてみたりするのですがどうやってもしっくりこないのです。
「1個のバッグで2度も深く悩んでしまうなんて・・・でも、そんな時こそいいバッグが出来るに違いない!」と自分に言い聞かせていた時、前に友人のお店で見たアンティークのポーチのことをふと思い出しました。あれだ、あれをやってみよう。フリンジではなく生地にぴったり沿うようにビーズで縁取りをしていくという手法をダブルで施すのです。シンプルですがバッグ全体をぐっと引きしめて重厚感をプラスしてくれます。ここまでこだわったのですから細かい部分も手は抜けません。持ち手をバッグに付けるサーモンピンクのグログランリボン、後ろ面に付けたボタン、そして落ち着いたゴールドのループ、全てパリのアンティークです。裏地はもちろん高級感のあるモアレ。表面の落ち着いたピンクと相性のよいカーキがかったベージュにしました。
このところ続いているヴィンテージスタイルの影響でアンティークの素材を使ったバッグをお店でもよく見かけますが、こんなふうに東洋と西洋を組み合わせたものは少ないと自負しております。これからも自分のテーマとして取り入れていきたいと思っていますし、その融合による何とも不思議で魅力的な世界を皆さまにもお伝えしたく今回のデザインを考えました。気になった方は是非、挑戦してみて下さい。
なお、持ち手の部分はあらかじめ革ひもをハトメでDカンに留めたものをご用意致しますので特別な道具は一切不要です。