バブル経済の崩壊とその後の不況は、ゴルフ会員権市場に大打撃を与えました。現在では、1000万円の会員権が20万円以下で取引されている例も決して珍しいことではありません。
すると、ゴルフ会員権を持っている方は、誰も、市場で換価しようとはしなくなりました。据置期間が経過したら、ゴルフ場に預託金の返還を請求するようになったのです。
しかしながら、ゴルフ場には、この返還に耐え得る体力はありません。資産隠しとか、いろいろな臭い噂の耐えないゴルフ場もないわけではありませんが、ゴルフ場というのは、一般的に、会員から集めた預託金でゴルフ場を造成し、維持していきます。
そして、毎年の営業状況がよければ、返還に要する資金を貯えることもできそうですが、大抵のゴルフ場は赤字経営で、税引後利益が5000万円を超えるゴルフ場など、日本には数箇所しかありません。
簡単なシュミレーションをしてみましょう。ゴルフ場の会員数は、18ホールのゴルフ場で1000名から2000名程度です。そして、預託金が一人あたり1000万円だったとすると、10年後に返すという約束をして集めたお金は全部で100億円から200億円ということになります。
2000万円だったとすると、200億円から400億円になります。そして、ゴルフ場の用地購入費と建設費は、バブルの頃は、概ねこれくらいかかりましたから、預託金を手元に残したままオープンしたゴルフ場はほとんどあり得ません。これに対して、年間の利益はどんなに多くても5000万円です。すると、10年間、これを預託金の返還のためにプールしても5億円しか残らない計算になります。
要するに、ゴルフ場は、10年後に預託金を返すと約束してはいたものの、返す予定などもともとなかったのです。ゴルフ場としては、会員は、ゴルフクラブをやめたくなったら、ゴルフ場に預託金を返還してくるなどとは考えず、マーケットで売ってくれる(そして、その方が高く売れる)と思い、また、ゴルフ会員権を買う人も、ゴルフ場に返済能力があるかどうかについてはまじめに考えることはなく、お金に困ったら、市場で売ればいい(そして、その方が高く売れる)と考えていたのです。
しかし、契約の上では、10年後、ゴルフ場は1000万円を返還するということになっています。バブルから10年経った今、市場価格は20万円程度です。あなたならどうしますか?誰でも、ゴルフ場に返還を要求します。
そして、ゴルフ場は返還するお金を持っていませんから、返してくれといわれても返すことはできず、結局、裁判になってしまいます。ゴルフ場によっては、100件以上の裁判を抱えているところもあり、そうすると、倒産したり、いろいろ新しい方法を画策したりするようになり、これが、現在、巷をにぎわしているゴルフ場の預託金問題なのです。
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