心臓から出ていく大きな血管を大動脈と言いますが、その中で胸にある部分を胸部大動脈、お腹にある部分を腹部大動脈と言います。
そしてこの大動脈の一部がこぶ(瘤)のように膨れたもの、あるいは大動脈の壁が一部裂けて膨らんだものを大動脈瘤と言います。発生した部位によって胸部大動脈瘤、あるいは腹部大動脈瘤と呼ばれますが、頻度的には腹部大動脈瘤がやや多くなっています。
 
いずれも小さいうちは症状はなく、大きくなって破裂の危険が迫ると、背中やお腹に違和感や痛みを感じることがあります。
しかし破裂するまで全く気付かないこともあります。大動脈は大きな血管ですので破裂すると大出血をおこし、生命に関わるようになります。
 
ふつうは健康診断やレントゲン検査などで見つかることが多いのですが、詳しくはCTやMRI検査で確認されます。腹部大動脈瘤の場合はお腹にドクドクする拍動のあるしこりを自分で気付く方もいらっしゃいますが、胸部大動脈瘤の場合は無症状で、たまたま検査をして発見されることが多いようです。
 
大動脈瘤が見つかっても小さいうちはお薬や生活習慣の改善で経過を見ることもありますが、急激に大きくなったり、あるいは6cm以上の大きさになると破裂する危険性が高く、人工血管置換術やカテーテルによるステントグラフト内挿術などの手術が必要になります。
 
大動脈瘤を生じる最も大きな原因は動脈硬化ですが、喫煙、高血圧などの生活習慣病もこれを助長させます。
 
胸部大動脈瘤の場合は外から触れることができず、しかも無症状であるため破裂するまで気付かないことが多く、ある日突然破裂して激烈な痛みとともに出血によるショックで急死することがあります。緊急手術で助かることもありますが、死亡率は80%~90%と言われています。検査をして破裂する前に見つけ、適切な治療を受けることが大切です。

(図はメルクマニュアル家庭版より)

原田外科胃腸科クリニック
原田 大