恐いぞ―!!膵ガン

膵に発症するガンで、近年増加傾向にあります。肺、胃、大腸、肝のガンに次いで第5位を占めています。平成18年の死亡者は23366人でした。内、男性が12539人、女性が10827人で1.16倍で男性に多いガンです。年齢のピークは60歳台です。

■膵ガンの誘発因子として
糖尿病、慢性膵炎、膵石症などの疾患と家族歴、肥満、喫煙、動物性脂肪、高蛋白食、コーヒー、アルコールの多飲、又、緑黄色野菜摂取不足などの食事習慣がある方です。

■症状は
上腹部の重圧感、食欲不振、背部痛、体重減少が一般的で、膵頭部ガンでは黄疸、嘔吐、下血、貧血、極端にやせが起きます。膵尾部ガンでは、強い上腹部痛と背部痛のみのことが多いです。初発症状がない例も多く、上腹部不定愁訴のこともあります。急激に糖尿病が発症することも半数にみられます。

■診断
早期診断が困難で診断が遅れ、発見時の約70%が肝臓や、骨にまで転移している切除不能な進行ガンです。血液検査(腫瘍マーカーCA19-9、膵酵素)、腹部超音波検査、腹部CT検査、MRI検査、内視鏡的な膵管造影検査や超音波検査などがあるが、早期ではこれらでも診断がつかないことも多いです。

■治療
手術のみ。切除できる例は30%。切除後5年生存率は10%強。予後がよくない代表的なガンです。

■結論;膵ガンの恐さ
肝や胆のうと同じく沈黙の臓器と呼ばれ、早期の発見が困難で症状発現したときには手術治療の不可能例が多く、手術しても長く生きられない。症状としての痛みも大変強いことです。

膵臓ガンの診断についても熱心な医師をかかりつけ医に選び、日頃からの経過をみてもらうと共に定期的な検査をしましょう。

恐いぞ急性膵炎

毎年約2万人が発症し、700人前後の死亡者がある疾患です。
■原因
アルコール性40%、胆石症20%、不明25%、残り15%が交通事故などの腹部外傷、手術、検査、高脂血症、おたふく風邪、肝炎、副腎皮質ホルモン剤、利尿剤の一部などのありふれたことが大部分です。大酒飲みの男性や中年で小肥りの女性で胆石をもつ人は要注意です。

■重症化の原因
膵臓は三大栄養素の炭水化物、蛋白質、脂肪を消化する多くの強力な消化酵素を作って分泌します。膵臓自身を消化されないように十二指腸以下の消化管に入らないと消化酵素が活性化しないような仕組みになっています。しかし、上記の原因で膵液(膵の消化酵素)が膵管から膵組織や腹腔内に漏れ出たり、血管内に入ると強い多発の臓器障害を起してしまいます。

■初期の症状
突然発症する①上腹部痛 ②背中に放散する痛み ③吐いてもおさまらない吐気、嘔吐④臍周囲の暗赤色皮膚変化、その他です。①~④があれば直ぐに受診しましょう。

■診断
症状、血液検査、X線検査、腹部エコー検査、腹部CT検査などで重症度も含めて診断します。

■治療
重症と軽症では異なり、重症の診断が48時間内に必要で、重症例は多臓器不全(MOF)から死亡に至ることもあり、直ちに高次医療施設への移送が必要です。
又、重症例は医療費の公費負担制度があるので素早く申請することも大切です。輸液、各種器機の利用による状態把握、鎮痛薬、消化酵素の阻害薬、感染症予防の抗生剤、胃酸分泌抑制薬、腸管栄養、その他で治療します。軽症例はこれらに準じます。移送は必要でありませんが入院は必要です。

■結論;急性膵炎の恐さ
アルコールや胆石やその他身近なことが原因となり突然発症し、急激な経過を示し重症例では30%以上が死亡することです。従って症状に注意し、直ちにかかりつけ医を受診するようにしましょう。

慢性膵炎は急性膵炎から移行することは少なく、初めから慢性型で起り、原因の6割がアルコールであり、治療は禁酒が何より大切です。糖尿病とも関連が強く、飲みながら治せるような簡単な病気でないことは承知しておきましょう。

■膵臓の生理作用

外分泌消化酵素 トリプシン、リパーゼ、アミラーゼ、キモトリプシン、アミノプチダーゼ、カリクレイン、エステラーゼ、ホスホリパーゼ、エンテロペプチダーゼ
内分泌ホルモン インシュリン:血糖を下降させ、糖からの脂肪生成を促進
グルカゴン:血糖が低下した時、肝臓からブドウ糖を放出させて血糖を上昇させる
ソマトスタチン:ホルモン分泌を抑制する


長崎けやき医院
山下 三千年