わきの下のアポクリン汗腺から分泌された汗が特有な臭いを生じる状態を腋臭症、いわゆる“わきが”と言います。汗を分泌する腺にはアポクリン腺とエックリン腺の2種類がありますが、エックリン腺がほぼ全身に分布するのに対し、アポクリン腺はわきの下、乳輪、外陰部、外耳道など体の限られた部分に分布しています。
 
アポクリン腺から分泌された汗自体は本来無臭ですが、その中に含まれる脂肪酸が皮膚の表面に常在している細菌により分解され、臭いを発する物質が生じるとされています。
腋臭症の患者さんはアポクリン腺の分泌が体質的に多く、外耳道のアポクリン腺の分泌も多いことから8割の方は軟らかい耳垢を持つことが知られています。わきの下はアポクリン腺の分泌が多く通気性が悪いため、特に臭いがおこりやすいようです。

治療は保存的治療と手術などの外科的治療があります。

保存的治療

臭いの程度が軽い時や手術を受けにくい時はまず保存的治療を行います。

① わきの下を石けんで良く洗い清潔に保ち、消毒用アルコールや抗菌作用のある外用剤を使用し、皮膚の常在菌を減らす。
② 腋毛の処理(剃毛、レーザー脱毛など)をすることにより汗の貯留や細菌の増殖を抑える。
③ 塩化アルミニウム水溶液などの制汗剤塩化アルミニウム水溶液などの制汗剤塩化アルミニウム水溶液などの制汗剤

外科的治療

保存的治療で効果がないときや臭いの程度が強い時に行われます。
傷跡が残るので慎重に検討する必要があります。

① 皮膚切除法 :腋毛範囲の皮膚全体を切り取る
② 剪定法 :わきの下の皮膚を切開して汗腺組織を切除する
③ 吸引法 :脂肪吸引装置で汗腺組織を吸引除去する
④ 電気凝固法 :毛孔に電極を挿入してアポクリン腺を焼灼する

なお、わきの下の臭いを気にして来院される思春期の患者さんの中には臭気に関して正常範囲の方も多く、しばしば自己臭恐怖症的要素が強いことがあります。
したがって、腋臭症かどうかは自分で判断せず、専門医に相談されることをお勧めします。

つかざき皮ふ科
塚崎 直子