脳の底部の中ー小動脈(径1~6 mm)にできる風船のようなふくらみを脳動脈瘤といいます。成人の2~6%(100人に数人)はこのような瘤をもっていると考えられており、たまたま脳のMRIやCT検査をうけたり、脳ドックをうけたりして見つかる場合が多いとされています。
大きさは径2mm程度の小さなものから25mm以上の大きなものまでできますが、75%以上は10mm未満の大きさです。

未破裂脳動脈瘤をほうっておくとどうなるのか?

未破裂脳動脈瘤の多くは症状をきたしません。しかし中には年々大きくなり神経の圧迫をきたしたり、また破裂してくも膜下出血をきたす場合があります。
くも膜下出血は発生すると半数以上の方が死亡するか社会復帰不可能な障害を残してします極めて重篤な病態です。したがって未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、この出血をきたす可能性(率)が最も危険かつ重要な問題となるわけです。

未破裂脳動脈瘤の自然歴

日本では10年以上まえから様々な検討がなされており、動脈瘤が発見され、なんらかの理由で治療されなかった症例を数年から10年以上にわたり経過観察した患者様のまとめから年間1~3%の破裂率が報告されています。
すなわち未破裂脳動脈瘤が見つかった場合、何もしないで10年間みていると約10~30%の確率でくも膜下出血をおこすと考えられるわけです。

未破裂脳動脈瘤の治療選択と危険性

現在動脈瘤の治療はA: 慎重に経過を追うという方法、B: 開頭によるクリッピングといわれる手技とC: 脳の血管の内側から動脈瘤はその本血管にコイルやバルーン・ステント等をつめる血管内手術があります。
 
経過を追う場合、上記にあるように瘤が拡大し破裂したり、また脳・神経の圧迫をきたして障害をきたす場合もあるので、慎重な経過観察が必要です。瘤の大きくなる率や頻度は明らかとなっていませんが、最低年に1度、または6ヶ月に一度は瘤のサイズの経過を追われることが推奨されます。
また症状をきたした瘤は極めて破裂しやすいと考えられており迅速な対応が必要と考えられています。

どのような治療にも合併症の危険性があります。開頭術クリッピングによる合併症として、脳内出血や、血管の閉塞による脳梗塞、手術中の脳の損傷、感染症、痙攣や美容上の問題などが報告されています。日本からの報告の多くは重篤な合併症は5%前後、また死亡率は極めて低いとされています。
また脳動脈瘤の血管内治療の合併症は、コイルの逸脱や手技中の血管閉塞、瘤の破裂、血腫の形成などが挙げられます。日本では5%前後と報告されています。

日本脳ドック学会によるガイドラインには未破裂脳動脈瘤が発見された場合の推奨される診療を下記のように記載しています。

1.脳動脈瘤が発見された場合は、その医学的情報について正確且つ詳細なインフォームド・コンセントが必要である。

2.脳動脈瘤が硬膜内にある場合は、原則として手術的治療(開頭術あるいは血管内手術)を検討する。

3.一般的に脳動脈瘤の最大径が5mm前後より大きく、年齢がほぼ70歳以下で、その他の条件が治療を妨げない場合は手術的治療が勧められる.ことに10mm前後より大きいには強く勧められるが、3、4mmの病変、また70歳以上の場合にも、脳動脈瘤の性状、手術のリスク、平均余命などを考慮して個別的に判断する。

4.手術が行われない場合は少なくとも約6ヶ月間隔の画像による脳動脈瘤の大きさ、形の変化の観察が必要で、増大あるいは突出部(bleb)の形成を認めた場合には手術的治療を勧める.観察期間中は喫煙、高血圧などの脳動脈瘤破裂の危険因子の除去に努める。

日本脳神経外科学会ホームページより抜粋

安永脳神経外科
安永 暁生