心臓は1日24時間で約10万回、収縮と弛緩を規則正しく繰りかえして全身に血液をおくりだしています。
心臓には電気を通しやすい刺激伝導系という特殊な組織があります。微小な電気信号が刺激伝導系を流れることにより心臓は収縮します。
心臓そのものや、刺激伝導系に異常が生じることにより電気信号が乱れると、心臓の収縮が乱れてしまいます。これが不整脈です。

不整脈は、
脈が遅くなる“徐脈性不整脈”
脈が速くなる“頻脈性不整脈”
脈がとぶ“期外収縮” 3種類に分けられます。

徐脈性不整脈

洞不全症候群・房室ブロックなどがあります。眼の前が暗くなる感じや、意識が遠くなるなどの脳に血液が不足するような症状があれば ペースメーカー治療が必要となることがあります。
心電図検査や心臓超音波検査、ホルター24時間心電図検査などを行っている診療所を受診して、検査のうえ専門の病院を紹介してもらいましょう。

頻脈性不整脈

心房細動・心房頻拍・発作性上室性頻拍・心室頻拍・心室細動などがあります。いちばん多いのは心房細動です。
高齢になるほど心房細動を起こす方がふえます。急に動悸がおこりますので不安になる方も多いのですが、動悸そのものが命にかかわることはありません。
しかし年齢や心臓の状態により脳梗塞をおこす危険性が高まることもあるので、ワーファリンなどの抗凝固療法が必要となることもあります。
 
頻脈性不整脈の中で一番危険性が高いのは心室細動です。突然死に直結しますのでAEDによる救命が必要になることもあります。治療はペースメーカーより形が大きい植え込み型徐細動器と薬ではアミオダロンなどが使用されます。アミオダロンは副作用が非常に多い薬剤ですが命に直結する不整脈なので、注意しながら使用されます。
 
その他、発作性上室性頻拍症も比較的よく見られる頻拍症です。急に動悸がおこり、しばらく動悸が持続した後に、急に頻脈がとまるのが特徴です。冷たい水を飲んだり、いきんだりすることで止まることもありますが、頻脈が続く時には注射剤で止めることができます。発作がおこったときに頓服で発作を止める薬を使うこともあります。
また頻度が多い場合には、発作を予防する薬が使われることもあります。
 
大学病院で、カテーテルアブレーションという治療が行われておりますので、主治医の先生に御相談ください。これは特殊なカテーテルを用いて刺激伝導系を治療することにより頻拍症を治療します。

期外収縮

期外収縮には心房性期外収縮・心室性期外収縮があり、一般的に心房性期外収縮より心室性期外収縮に注意が必要です。自覚症状のつよさと、心機能により治療の必要性がちがいます。心機能が良好で症状が軽ければ、薬は必要ないことが多いです。
カフェインの取りすぎや、ストレス・睡眠不足・アルコールにより不整脈は増悪します。アルコールを飲んでいるときは不整脈が起こりにくくなるのですが、酔いがさめる時には不整脈が必ず悪化します。
 
このような原因で不整脈は悪化するので、これらの生活習慣を見直すことが大切です。それでも不整脈の症状が強いときは主治医の先生によく御相談ください。 

CASTスタディという大規模臨床研究が行われ、心筋梗塞後の不整脈の患者さんで、抗不整脈剤を内服した患者さんが、使用しなかった患者さんよりも死亡率が高かったという結果が出てから、最近では不整脈薬が使用される機会は少なくなっています。
 
いずれの場合にしても的確な不整脈の診断と心臓の機能や心臓の合併症により不整脈の治療は違ってきます。心臓の打ち方に異常を感じられた方はまずは主治医にご相談ください。

羽野内科
羽野 修