糖尿病の治療に、食事療法と運動療法は、欠かすことが出来ません。身体にとって一番大切なエネルギーであるブドウ糖を各細胞内でエネルギーとして利用するためには、インスリンという膵臓で作られるホルモンの働きが必要です。身体に必要な量のエネルギー(食べ物)を摂ることが重要で、食べ過ぎるとその分インスリンもより多く必要になり,膵臓に負担をかけて疲弊させることになります。

膵臓が十分働くことが出来ない時は、お薬の力を借りることになります。お薬には種々の作用のものがあり、膵臓からのインスリン分泌を高めたり、インスリンの効きめをよくしたりします(=インスリン抵抗性を少なくするともいいます)。

インスリン注射

インスリン注射は、足りないインスリンの補充として、あるいは全くインスリンを作れない膵臓に代わって、血糖コントロールに与かります。昔は牛や豚の膵臓からインスリンを抽出していました。
今は、ヒトインスリンを大腸菌に作らせることが出来るようになりました。

膵臓から分泌されたインスリンは、すぐ肝臓で壊され、体内では非常に短い時間しか働くことが出来ません。そこで注射剤のインスリンはより長く働くように工夫されて来ました。

(1)ひとつは、膵臓から24時間少しずつ分泌される基礎分泌を補うものです。作用の持続時間は18~24時間です。持効型といわれるもの(レベミル、ランタス)と中間型といわれるもの(ヒューマログN、ヒューマリンNなど)があります。1日1~2回注射します。

(2)もうひとつは、食物の消化吸収により増加するブドウ糖をすばやく肝臓や筋肉に取り込み血糖上昇を阻止する追加分泌を補うものです。作用持続時間が5~8時間の速効型(ヒューマリンR,ノボリンR)と、作用発現が速く、最大作用時間が約2時間と短い超速攻型(ノボラピッド、ヒューマログ、アピドラ)があり、食前に注射します。 

混合型といわれるものは、中間型と速効型あるいは中間型と超速攻型を組み合わせたもので、その組みせる割合はいろいろ(20~70%)です。
インスリン注射の回数は患者さんの状態等により1回から数回までいろいろです。

コントロールをよくするために、自己血糖測定を併用し、頻回注射をする強化インスリン療法もよく行われています。

インスリン以外の注射薬

昨年(2010年)糖尿病治療の新しい薬として話題になった消化管ホルモン(インクレチン)というお薬には、DPP-4阻害薬といわれる経口剤のほかに、GLP-1受容体作動薬という注射薬があります。これらの薬は、いままでの血糖降下剤が低血糖を起こすリスクがあったり、体重が増加しやすかったりという使いにくさを持っていたのに対し、単独では低血糖を起こさないといわれています。さらに体重もふえません。注射薬では、体重の減少が期待できます。これらのお薬では、動物実験では膵細胞の増加も見られています。

糖尿病はいろいろ合併症が怖いといわれますが、治療の手段は、どんどん増えています。自分と家族と医療者のチームでコントロールしていきましょう。

とおやま内科
遠山 杏子